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樹木・マツの管理 ~マツカレハ防除~

[2016.11.01]

●営農技術指導員 大澤梅雄

質問
 庭に先祖伝来のクロマツがあり、毎年わずかですがマツケムシが発生しています。幸いにも今年は被害がありませんでしたが今後の事もありますので、マツケムシの防除について教えてください。

回答
 マツケムシは通称名で、正式にはマツカレハの幼虫です。
 初夏に発生するマツカレハの老熟幼虫は、集団で昼夜問わず葉を激しく食べます。食害量によっては、樹はひどく衰弱しカミキリムシやキクイムシ類が寄生しやすくなりますので、軽微な枯れだからといって放置せず必ず防除しておくと良いでしょう。
 当地では平成23年にマツカレハが多く発生しましたが、今年は全く相談件数がありませんでした。しかし、いつなんどき大発生するかもしれませんので防除のポイントについてまとめてみました。

1 形態
 老熟幼虫の体長はおよそ6cm、頭部は暗褐色、胴部は銀色または黄褐色で、全体が黒い長毛に覆われる大型のケムシです(1)。背面に黒色の毒毛を持つので直接手で触らないようにして下さい。成虫は開帳およそ9cmにもなる大きな蛾です。

写真1 マツカレハの幼虫

2 生態および発生時期
 幼虫は2月ごろから越冬場所を離れ4月頃になると枝先に移動します。5~6月には老熟幼虫となり葉をガツガツと食べ、6~7月頃葉の間に繭を作り蛹化し、20日後には成虫となります。通常年1回の発生で、交尾すると翌日の夕方から針葉にイクラのような丸いツブツブの卵を産み付けます。孵化幼虫は針葉の片側だけを集団で食害するため、被害は塊状になるのが特徴です。
 幼虫は8月中旬頃から現れ、第3~4齢幼虫となる10~11月まで食害を続け、その後幼虫態のまま樹皮の割れ目、地際、落葉下などに潜り越冬に入ります。しかし、当地のような暖地では12月上旬でも、体長3cm程度に成長した幼虫がまだ針葉の付け根にいるのを確認しています。このまま樹上越冬しているかもしれません。

3 防除
(1)耕種的防除 
[ア] 孵化直後の幼虫は、集団で生息しているので、虫のいる枝を切り取って処分すると効率的に防除できます。また、伝統的な防除法として良く知られているのが、幼虫の越冬習性を利用したコモのまきつけです。11月頃幹にコモを巻き、2月にコモの中に潜んだ越冬幼虫をコモごと焼却する方法です。
[イ] 古葉が多く、枝葉が密生してくると幼虫が発生しやすくなりますので、春と冬の剪定は必ず行ってください。

(2)農薬による防除
 幼虫の発生を認めたらスミチオン乳剤、カルホス乳剤、トレボン乳剤等の殺虫剤を散布します。8月下旬から幼虫が越冬体制に入る前の11月頃までが防除時期です。また、暖かくなる4月、再び越冬幼虫が樹上に登ってきて針葉を食害しますので、4~6月にも防除します。老熟幼虫にはピレスロイド系殺虫剤(トレボン乳剤)が効果的と言われています(2)。
 一般的に若齢幼虫の防除効果は高いけれども老熟幼虫になると防除効果が低くなります。したがって、効果的な防除方法は幼虫を早期に発見し、若齢幼虫のうちに散布するとよいでしょう。

写真2 マツカレハの繭

4 マツカレハの発生推移と温度
 平成23年のマツカレハに関する相談件数は10件でした。それ以降は毎年数件程度と少ないことから、平成23年は大発生した年と考えています。
 平成23年の旬別日平均気温と平年値(1981~2010年)を比較しますと、2月下旬が4℃高く、6月下旬は5℃も高くなっていました。それ以降、これほど高く推移した年はありません。
 マツカレハの幼虫大発生の要因は、単純に温度ばかりでなく他の要因も関与していると思われますが、「マツカレハの幼虫は2月下旬と6月下旬が平年より約5℃暖かいと大発生する」という仮説を大胆にたててみました。
 仮説の正誤性を確認してやろうという意気込みで、幼虫の観察を習慣づけてみてはいかがでしょうか。きっと早期発見で効果的な防除につながると思います。

参考図書
(1)伊藤孝美(1999):原色花卉病害虫百科7花木・庭木・緑化樹,農文協
(2)上住 泰・森田 儔(1991):樹木の病害虫防除,家の光協会

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