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10月の果樹だより

[2016.10.01]

●杉山文一営農技術指導員

苗木の植え付け方法と施肥と土壌管理のポイント

1 落葉果樹類の苗木の植え付け

 愛知県尾張地域では、秋植え(11月頃)が一般的です。春先の2月下旬には根が動き始めるため、根が土となじみやすく春先の生育が良好となり、落葉果樹類の苗木の植え付け時期となります。ただし、イチジクは寒害に弱いので春(3月植え)としてください。

 植え付け方法は、図を参考にしてください。注意点は、①盛り土をして植えますが、台木の接ぎ木部分を地上部に出して深植えにならないようにします。接ぎ木部から上の、穂木の部分から根がでると生育に影響が出ます。②植え穴に水が溜まらないように排水に注意して下さい。植え付け時に、土壌が乾かないように上からかん水をおこないますが、大量のかん水をおこなったり、雨が降って植え穴に水が溜まると根が弱ってしまって生育に影響します。③太根の先端部分の細根を切り返えして、四方に根を広げて植えます。太根の先端部分を切り返して植えると春先になって発根が良くなります。

図 苗木の植え方

 植え付ける場合は、植え穴だけ掘るのではく、前もって植え付け予定地に堆肥を散布し、全体を浅く起こしてから植え穴を掘って植え付けると根の伸長も良くなります。植え穴の下層土には、完熟堆肥と熔リンを入れて、良く混和しておきます。そして、完熟堆肥に根が接しないように植えます。

 苗木は、40~50cmの充実した葉芽の上で切り返し、支柱を立てて、倒れないように支柱に誘引します。

 盛り土をして植え付けた後に、有機質補給と乾燥防止として、ワラや乾燥した雑草、バーク堆肥等を敷いて下さい。施肥は、萌芽後から生育に合わせて化成肥料を施用します。

2 施肥の注意点

(1)主要な栄養素
 果樹の生育に必要な十数種類の無機養分のうち、チッソ、リン酸、カリなどは天然でも供給されますが、必要量が多いため肥料としても補給します。また、カルシウムとマグネシウムは土壌の化学性である酸度矯正することを主目的に施用されます。主要な栄養素の役割は、次のとおりです。

[ア] チッソ(N)  植物が生長するためのタンパク質の合成になくてはならない成分であり、細胞や葉緑素をつくるのに必要です。チッソが不足すると、葉が小さく、黄色くなり、樹も大きくなりません。また、チッソが多すぎると、花芽の形成がわるく、新梢が徒長し、果実の成熟が遅れ、着色も悪くなり、病気の発生の原因ともなります。

[イ] リンサン(P)
 細胞をつくるのに必要な成分で、植物体の細胞核を形成していますので、リンサンがなければ植物は生きていけません。しかし、チッソに比べて吸収量が少ないので、チッソより少なめの施用で十分です。リンサンは、土壌に吸着しやすい成分です。

[ウ] カ リ(K)
 炭水化物やタンパク質の合成を助ける役目をしています。果実が肥大し始めると、果実のカリ含量は高くなるので、果実肥大期には必要な成分です。呼吸量はチッソと同じかやや多いが、稲ワラや敷き草等からの天然供給量が多いが、利用率も比較的高いので、チッソと同量かやや少なめに施用すればよい。

[エ] カルシウム(Ca)  植物がタンパク質を合成するときに有機酸ができる。カルシウムは、そのときにできた過剰の酸を中和し、適当な酸度を保つはたらきをします。また、葉緑素の生成や炭水化物の移動にも役立っている。細胞の組み立て材料にもなります。

[オ] マグネシウム(Mg)
 マグネシウムは葉を構成している葉緑素の細胞を構成する中心的な役割を果たしている。欠乏すると光合成に影響します。

(2)施用の種類

[ア] 基肥
 落葉果樹は、休眠期の11~3月に施用する肥料で、常緑果樹とイチジクは春先の2月中下旬に施用する肥料です。有機配合肥料を主体に植物が必要とする2/3程度の成分量を施用します。

[イ] 追肥
 果実の肥大を促進させるためや、収穫期まで樹勢を維持するために施用します。作目によって違いますが、5~7月にかけてカリを主体にチッソを施用します。

[ウ] 礼肥
 果実の収穫後に葉の光合成を盛んにして、貯蔵養分の蓄積を増すことを目的に、速効性のチッソを主体に施用します。

(3)主要樹種の施用時期と施肥の注意点
 主要樹種の施肥量の目安を表1にまとめました。施肥量が多いと品質が低下するので注意して下さい。チッソ成分を多用すると枝が軟弱に生育し、品質低下や病害虫の発生を助長するので注意して下さい。施肥時期や施肥量は、土壌条件と有機質の施肥量及び収穫が早い品種か遅い品種かによって生育ステージが違ってくるため、条件に合わせて施用量を変えるようにしてください。

表1 施肥の目安(成木)

[ア] カ キ
①着色が進んで来たころの10月下旬に礼肥を施用します。
②着果が少なく樹勢が強い場合は、6月中旬の追肥は品質に影響するのでしない方が良い。
③生育期間が長いので、基肥は12月中頃に有機質中心で施用し、長く効かせるようにします。

[イ] ブドウ(大粒系)
①6月上旬の追肥は、樹勢の状態をみて、強い場合はチッソ成分を控えてください。
②5月下旬から6月にチッソ成分が効くと、新梢が伸びて巨峰系品種は花振るいの原因となり、バラ房になってしまいます。また、園が暗くなって果実の品質が低下します。
③基肥は、遅いと品質に影響が出ますので、10月下旬には施用します。

[ウ] モモ(晩生種)
①チッソがいつまでも効いていると、新梢が遅伸びや生理障害が発生しますので、基肥は11月上旬頃には施用します。
②翌年の花芽の充実と貯蔵養分の蓄積を図るため、礼肥を9月上旬施用します。

[エ] ウ メ
①樹勢の回復を図る6月下旬の礼肥は、樹勢の強い場合はチッソ成分を減らします。
②開花や生育が早いので、基肥は10月中旬には施用します。

[オ] キウイフルーツ
①5月下旬の追肥は、樹勢の状態をみて、強い場合はチッソ成分を控えます。
②生育期間が長いので、11月中旬までに有機質肥料を主体に施用します。

[カ] イチジク
①樹勢が弱い場合は、6月下旬と7月中旬にチッソ成分を追肥します。
②秋に成熟するので、2月下旬に基肥を施用します。

[キ] ウンシュウミカン(早生種)
①落葉果樹と違い、基肥は春肥として3月になってから施用します。
②10月下旬の秋肥(礼肥)は、着色が始まったら施用します。

[ク] 中晩柑類
①生育期間が長いので、春先に基肥を春(2月下旬)と夏(5月中旬・6月中旬)に追肥を施用します
②生育期間が長いので追肥の回数が多いが、1回の施肥量は少なめにする。
③礼肥は、着色始めの10月下旬に施用します。

表2 主要樹種類別の適正な土壌条件

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