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7月の果樹だより

[2018.07.01]

●杉山文一営農技術指導員

<柑橘類の夏期管理のポイント>

今年の柑橘類の生育状況は、満開が5月2日頃と昨年より7~8日程度早い状況です。今年は、温州みかんや中晩柑類全体に開花状況は良く、着果も良い。一部隔年結果の樹も見られますが、全体に着果量が多い状況ですが、樹は全体に落ち着いていますが、新梢の伸びは良いと思います。夏に向かい、果実も肥大してきます。

1 結果習性

カンキツ類の結果習性は、図1のとおりである。①結果母枝は、今年果実を着ける結果枝を発生させる枝である。②予備枝は、今年は花を着けないで発育枝だけを発生させる枝です。

 

(隔年結果性)

柑橘は、成り年(表年)の翌年は、不成り年(裏年)になる隔年結果を起こす性質が強い。成り年には適量の2~3倍も着果することがあり、これをそのままにしておくと果実が小さくなるだけでなく、樹体養分の消耗が大きく、隔年結果を助長する原因となる。

隔年結果を防ぎ、高品質果実を連年生産するためには、摘果、新梢管理(予備枝の確保)などによって、着果量を調節したり、結果枝と発育枝の割合を適度に保ったりする必要がある。

2 柑橘類の摘果について

(1)摘果の目的

果実どうしの養分競合を少なくし、大きくて・形の良い・美味しい果実を生らせる作業です。果実が着きすぎると、葉の光合成産物が多くても1果当たりの配分量がすくなくなり肥大が悪くなり、小玉が多くなり、樹に負担がかかって隔年結果を起こします。また、隔年結果を防止し毎年着果させるためにも摘果をして適正な着果量にします。

毎年着果させるには摘果をして適正な着果量にすることが必要です。

(2)摘果の基準

摘果は、一般的には生理的落果(6月中旬~7月上旬)が終わったら果実が多く着いているところを中心に7月上中旬に予備摘果をおこない、8月上中旬に仕上げ摘果をします。予備摘果(7月)と仕上げ摘果(8月)の2回行うと果実が揃います。

家庭果樹栽培や手間の関係で、1回で摘果をしたい場合は、表と図2・3を参考にしておこなって下さい。

今年は着果量が多いため、隔年結果を防ぎ、毎年大玉を生らせるためには、半分程度は着果量を減らすことが必要です。

 

 

柑橘類の美味しい果実の連年結実と収穫について

 

 

(4)温州ミカンの着果状況

着果状況は群状着果(かたまってならせる着果方法)でなく、一粒なりの4~5枚の有葉果の独立着果を目指します。

(5)はるみ、不知火の着果状況

はるみ・不知火は、着果量が多いと理想的な結果母枝が形成されず、翌年良い結果枝が発生しません。そのため、隔年結果樹となってしまいます。隔年結果を防ぐには、思い切った摘果が必要で、着果量を減らしてください。

(6)隔年結果の原因と対策

隔年結果を防ぎ、連年生らせるには、摘果・新梢管理(予備枝の確保)などで、着果量を調節します。  

着果量が多いと着果不良となり隔年結果します。

花になるもとが小さな芽の中にできる。この花のもとである、花芽ができる時期を「花芽分化期」と言う。

花芽分化期:生理的にみて9月から11月上旬までと2月から3月にかけての時期

花芽分化への影響:9月から10月ごろが最も影響しやすく、2から3月は影響が少し弱くなる。

   結果樹:10月以降3月初めごろまで花芽の形成に強く影響する。

未結果樹:12月以降の花芽の形成への影響は弱い。

(枝は隔年結果をおこしている)

前年に果実がなった結果枝は果梗枝と呼ばれ、この枝からは、今年花をつける結果枝が出ることは少ない。

前年に果実がならなかった発育枝からは、今年花をつける結果枝が出やすく、前年の発育枝を結果母枝と呼んでいる。

ミカンの緑枝1本1本は完全に隔年結果している。

(花芽分化期と着果量減少について考えられる要因)

花芽分化への影響は、9月から10月ごろが最も影響しやすく、2から3月は影響が少し弱くなる。

*着果量が少ない

・前年に着果量が多かった樹

・2月から3月にかけて、葉色が茶色くなって落葉の多い樹

*考えられる原因

・結果母枝の充実がわるく花芽分化が不十分な状態になる

・着果量(多い)や天候(9月の長雨や冬の寒さ)や栽培管理(成分不足と土壌条件の悪化)の影響で樹勢を弱め、花芽分化期に結果母枝が充実不良になると花芽が減少する。

3 施肥管理について

① 温州ミカンは、礼肥として10月中旬に施肥するまで、樹勢の弱い樹を除いて施肥はおこないません。

(追肥:品質に影響)

*礼肥(10月中旬)

グリーンアタックS480(化成肥料):40kg

② 甘夏カン、伊予カン、ハッサク、不知火、はるみのような中晩柑橘品種は収穫が遅いので追肥を行います。収穫の遅い品種は6月中旬に追肥をし、10月中旬に礼肥を施肥します。

*追肥(6月中旬)

グリーンアタックS480(化成肥料):20kg

*礼肥(10月中旬)

グリーンアタックS480(化成肥料):40kg

4 病害虫防除について

梅雨入りとなりますが、6月は降雨が多い予測です。いまのところ、病害虫の発生は全体に少ないように思われます。

① 黒点病の防除

グリンセンターでの販売品を見ていますと、温州ミカンの一部と甘夏と八朔に黒点病の発生が見られます。8月から9月にかけて降雨が多いと発生が多くなります。

ア 発生部位と症状

・果実に小さな黒点状の小さな病斑をつくり、外観を著しく損なう。

・枯枝や枯れた果梗近くの果実や葉に出やすい。

・菌糸は、枯れ枝で、越冬する。

・初期感染(6月から8月)と後期感染(9月から11月)がある。

・雨滴伝染する。

イ  防除方法

(薬剤散布)

・前期感染期:6月中旬、7月中旬

・後期感染期:8月下旬

(耕種的防除)

・枯れ枝を切除する。

・園内を綺麗にする。

② ハダニ

ア 発生部位と症状

・葉や果実を加害し、葉緑素が抜け白っぽくなる。

・果実が加害されると、着色が悪くなる。

・加害された葉は、落葉が早なる。

・乾燥すると、発生が多くなる。

・高温時は、発生密度が低下する。

イ 防除方法

(薬剤散布時期)

1月上旬、6月中旬、7月中旬

(耕種的防除)

散水など強い降雨で流れることがあります(降雨が多いと発生が少ない)。

③ サビダニの防除

近年、果皮が茶色なるサビダニに加害が目立ちます。サビダニの発生は、6月と9月です。近年、秋がいつまでも温かいことが遅くまでサビダニが発生し被害を多くする原因の一つと思われます。

ア 発生部位と症状

・果実に被害を及ぼす。

・6月から7月の加害は、カルスが生じ灰白色のサビ症状になるが、8月から10月の加害は茶褐色または黒褐色となる。

(薬剤散布)

6月中旬、7月中旬、9月上旬、12月

*発生の多い園は、例年使用している薬剤を変えてください。

(耕種的防除)

・園内を綺麗にする。

・風通しのよい樹形にする。

③ カイガラムシ類

(ア)ヤノネカイガラ

近年、発生が多く見られます。雌成虫は虫体を茶褐色をした矢じり状の形をした介殻で覆っており、その長さは4~5mmである。葉や枝、果実に寄生し、樹勢を低下させる。5月下旬~6月上旬に第1世代の幼虫が発生する。第2世代は、7月上旬に発生して11月中旬まで続く。重要害虫なので、注意してください。

天敵は、中国から導入されたヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチです。

(イ)イセリヤカイガラ

成虫および幼虫が、主に枝、幹に寄生して越冬する。第1世代は5月中旬、第2世代は7月中旬、第3世代は10月に発生する。雌成虫は、楕円形で体長4~6mmで、暗橙赤色で黒斑がある。背面は黄色を帯びたロウ質で覆われ、白色の卵のうを形成する。

ベタリアテントウが天敵で、捕食します。

(ウ)コナカイガラムシ類

若い葉や緑枝、幼果などに多く寄生し、養液を吸収する。そのため、葉や果実は成長すると変形する。雌成虫は、体長3mm程度で白いロウ質に覆われている。第1世代幼虫は5~6月、第2世代幼虫は7~8月、第3世代幼虫は8~9月に発生する。

(防除ポイント)

① 薬剤散布時期

1月上旬、6月中旬、7月中旬、9月上旬

* カイガラムシ類の防除のポイントは、幼虫発生期に薬剤散布することが重要です。幼虫発生期は、カイガラムシ類の種類によって違いますが、6月中旬から7月上旬が幼虫発生期となります。

② 耕種的防除

風通しの悪い樹形や密植園にしない。また、発生している部分の枝を除去して、発生密度を低減させる。見つけたら手で取ることも重要です。

<薬剤の選定は、防除こよみを参考にして下さい。>

5 着果量が多いと樹が衰弱し冬季に異常落葉する原因となる。

今年の冬季に、葉が異常に落葉したみかん樹を多く見かけます。

① 落葉する原因

柑橘類は、原産地が亜熱帯地域であり寒さに弱い果樹です。そのため、冬季に起こる低温による凍害、強風によって異常落葉が発生します。樹勢が弱り、降雨が少なく土壌乾燥すると落葉率も高くなります。

 着果量が多くて、樹勢が弱っていると冬季に寒さで落葉が多く発生します。

 異常落葉の多くは、病害虫が原因でなくて生理障害の方が多くみられ ます。

② 対 策

落葉した場合は、少し様子を見て、新梢が発生し3枚~4枚展葉してきら速効性の化成肥料(園芸化成)を500g程度施用して樹勢回復を図る。

新梢が発生すれば、樹勢回復を図れます。果実は全部摘果して、樹勢回復を図ります。

樹勢を低下させないためにも、着果過多は禁物です。着果量を制限する摘果作業が、必要です。

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