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果樹の育種

[2023.01.01]

●営農技術指導員 須崎静夫● 

●はじめに
 毎年、新品種が発表されます。おもな育種方法は、交配と変異です。古くは「幸水」「ふじ」「巨峰」が、最近ではカンキツ「せとか」・クリ「ぽろたん」・ナシ「あきづき」・ブドウ「シャインマスカット」「クイーンニーナ」などが、交配育種されています。全国制覇・一攫千金を狙うのもよし、軽い気持ちで取り組んで、のめり込むもよしです。種苗登録されると、育成者権が保護されます。
 種苗登録を行う場合には、親品種やよく似た品種(対照)との比較が必要となります。きちんと記録しておきましょう。親品種の使用にも権利者の許可が必要な場合があります。種苗登録の要件として、①区別性、②均一性、③安定性、④未譲渡性、⑤名称の適切性があります。
●交配
 育種目標、交配組合せを決め、交配親(メス)に花粉親(オス)を掛け合わせます。育種目標は、現行品種より大きい小さい、熟期が早い遅い、糖度が高い、果皮色が濃い薄い、病害虫に強い、機能性成分が多い、アレルゲンが少ない、などでしょうか。葉っぱが綺麗なだけでもOKです。「糖度が高いけれど病気に弱い品種」と「糖度は低いけれど病気に強い品種」を交配すると、「糖度が高くて病気に強い個体」ができずに、「糖度が低くて病気に弱い個体」ができるかもしれません。
 2品種の開花時期が合わない場合は、片方を促成したり、前年から保存した花粉を利用したりします。自家受粉や自然交配を避けるには、開花前に葯や花粉を取り除いて(除雄)、開花・交配前後にも袋掛けするとよいでしょう。
 落ちた種子が発芽して、成った果実が美味しかったというような、自然交配(偶発実生)でも良い品種がたくさんあります。晩生品種の晩熟果実からはもっと遅い品種を、早生品種の早熟果実からはもっと早い品種を、アーモンド・ギンナン・クリ・クルミなどの大きな種子を育てると、もっと大きな種子の品種を育成できるかもしれませんね。
 施肥は控えめに、種子が充実するまで果実を成らせておきます。間違って収穫されないように注意し、鳥獣害にも気を付けましょう。採種後は、たねまき培土に取りまきします。温帯性果樹は、採種後、すぐにまいても寒さに合わないと発芽しないものが多いようです。
 開花・結実を早めるためには、実生苗を1.5mくらい真っすぐ伸ばしてから斜めに誘引したり、同じ樹種の成木に高接ぎしたりします。
 種なし化の方法は3倍体育種(2n×4n・4n×2n)でしょうか、よくわかりません。スモモ・ビワ・ブドウ・リンゴなどにあります。クリやギンナンを種なしにすると食べるところがなくなります。
 カンキツ類には温州ミカンのように、1つの種子から複数の芽が出ることがあり、多胚性といいます。種子1かたまりの中で、緑色の濃い一片が花粉と受精した交雑種子で、残りが交雑していない珠心胚種子です。珠心胚種子は、母親の性質をほぼ引き継いでいますが、無毒化され樹勢が強くなったり、変異がみられたりすることがあります。  「清見」「レモン」などの単胚性品種の種子はすべて交雑種子になります。多胚性か単胚性かは、種皮をめくればわかります。
●変異
枝変わりともいわれ、樹全体の一樹変異と一部が変異した芽条変異とがあります。日ごろからよく観察し、従来の品種との違いを見つけて、より良い区別性が認められれば新品種へ登録できるかもしれません。温州ミカン「宮川早生」・モモ「白鳳」・リンゴ「ふじ」からは、多くの変異品種が育成されています。果皮色の変異は起こりやすいので、種苗登録できないことがあります。区別性は大きくはないけれども、ある程度の変異が認められれば、系統とよばれます。 

▲交配育種の例(カンキツ)

①開花前:徐雄~袋掛け(交雑防止)
②開花:交配~袋掛け
③結実管理
④収穫・採種
⑤採種
⑥播種
⑦発芽
⑧実生苗育成
⑨高接ぎ(生育促進)

 

▲図1 ハートの形をした果物ができました ナシ・イチジク・ブドウ

▲図2 いちじく新品種の育成過程イメージ 実際には花粉を有する花粉親を探すところから始めます。

▲図3 イチジクの新品種 果皮色3姉妹:橙々色・桃色・黄色ができるといいですね。

▲図4 カンキツ新品種の育成過程イメージ 綺麗な果皮、可愛いデコ・剥きやすく、種なし、香りもよくて小袋ごとに食べられる品種ができるといいですね。

▲図5 カンキツの新品種ができました

▲図6 おまけ

▲図7 おまけ2

▲図8 ハートの形をした果物いらんかえ~

▲図9 ハートの形をした果物いらんかえ~②

▲図10 イチジクの新品種 果皮色3姉妹:橙々色・桃色・黄色ができるといいですね。

●ちょろっと一言●
 愛知県の試験場では、ナシ「陽水(ようすい)」「歓月(かんげつ)」「端月(ずいげつ)」とカンキツ「夕焼け姫」が育成されています。成功のカギは先見性、的確な判断とちょろっと地道な努力でしょうか。それとも単なる偶然でしょうか。

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