アスターの管理 ~アワダチソウグンバイ~
[2017.07.01]
●営農技術指導員 大澤梅雄
質問
6月頃からアスターの葉に針で突いたような黄白色の小さな斑点が無数に発生しました。ハダニの被害と思い殺ダニ剤を散布しましたが効果がありませんでした。一体何の被害でしょうか。
回答
アワダチソウグンバイの被害です(写真)。
直売所にアスターを出荷される方々は、立ち枯れ病に対してしっかりと対策をとられていますが、意外と害虫対策はおろそかになっています。晩春から初秋にかけて発生する様々な害虫の中でも、アワダチソウグンバイは著しく商品価値を低下させてしまいます。この虫に対する適用農薬はありませんので、防除の要領について説明します。
写真 アワダチソウグンバイの被害 |
1 アワダチソウグンバイとは
本種は北米からの 侵入害虫で、カメムシ目グンバイムシ科に属します。平成12年に兵庫県西宮市で初めて発生が確認され、それ以降急速に分布域を拡大し、今では九州から東北の宮城県まで分布しているそうです。
(1) 形態
体長約3mmで全体的には四角い形状をしています。ちょうど相撲の行司が持つ軍配に似た形状からグンバイムシと命名されました。
(2) 被害
葉裏に寄生して吸汁加害します。その加害痕はハダニの加害痕によく似ています。ハダニの被害と異なるのは、黒い粒(排泄物)が葉裏に付着している点です。アスターの他にもアゲラタム、キク、ヒャクニチソウ、ヒマワリなどは被害を受けます。
(3) 生態
セイタカアワダチソウや落ち葉の下で越冬した成虫は、寄種植物の葉肉に産卵します。セイタカアワダチソウでは4月中旬頃から第1世代幼虫が発生し、葉裏で成虫になりアスターに飛来し加害します。高温乾燥条件下で発生が多くなります。
2 防除
(1) 耕種的防除
冬から4月にかけてセイタカアワダチソウなどの雑草を取り除き、越冬場所をなくしておきます。成虫が発生する4月以降に雑草を除去すると、餌をなくした成虫が分散しやすいので注意して下さい。
(2) 農薬散布による防除
アスターにはアワダチソウグンバイをはじめとして、ウリハムシ、エゾギクトリバ、オンブバッタ、ハマキムシ類、ハモグリバエなど多くの害虫が発生します。これら害虫の発生状況を常に観察し、発生したら速やかに登録農薬を散布します。発生初期に対処することが肝心です。
しかし、アスターのアワダチソウグンバイを対象にした登録農薬はありません。こういう場合は同時防除で対応します。
a アスターの登録農薬
アスターを適用作物に入れている殺虫剤は、唯一「スミチオン乳剤」のみです。適用害虫はウリハムシとなっています。この虫の防除にスミチオン乳剤を散布すれば、同時にアワダチソウグンバイも防除できます。これを同時防除と言います。
b 花き類・観葉植物の登録農薬
花き類・観葉植物として登録されている農薬は色々あります。スミチオン乳剤はオンブバッタが、マラソン乳剤はアザミウマ類、アブラムシ類が適用害虫として登録されております。それぞれの害虫が発生した時に散布しておけば、アワダチソウグンバイも同時に防除できます。
c 同時防除で注意すべきこと
使用農薬のラベルに記載されている内容を必ず遵守して下さい。同時防除は適用害虫が発生し、しかも、同時防除対象害虫が発生している場合に限ります。
写真 アワダチソウグンバイ |