ナシの栽培
[2021.09.01]
●営農技術指導員 須崎静夫●
「長十郎」「二十世紀」から、「新水」「幸水」「豊水」の3水になり、なんでもかんでも「水」のつく「筑水」「南水」「陽水」を経て、美味しい「あきづき」が出てきました。
自家結実性が低いので、交配親和性の高い他品種の花粉が必要です。
「幸水」では、長果枝につく果実は大きくなるけれども熟期が遅い、短果枝につく果実は小さいけれども熟期が早い、といわれています。
棚仕立て、長果枝と短果枝を組み合わせた整枝せん定法です。自分なりに長果枝と短果枝、それに次年度以降に利用する予備枝の割合を決めてください。
●整枝せん定
落葉後、つぼみが膨らむまでに行います。主枝・亜主枝の先端は外芽の葉芽で切り返します。少し弱い枝は、予備枝とします。枝を倒す誘引は、樹液が動き出してから行うか、あらかじめ、枝のもとに切り込みなどを入れておきます。
●花切り
誘引後、つぼみが膨らみ始めたころに、下向きになった芽(花蕾)の先端を、摘果はさみで切り落とすと、摘蕾の作業効率が上がります。大切な葉芽を切らないように注意してください。
●摘蕾
開花直前の花蕾を、上から指先で軽くたたいて落とし、1果叢(花・果実のひとかたまり)で半分くらい(3から5個)に減らします(図)。
結果枝の先端2芽についた花蕾をすべて摘み取ります。同時に、授粉に使う花を採取して、花粉を調製します。
▲摘蕾
●人工授粉・摘花
開花始めと満開の頃、気温の高まる午前中を中心に、交配親和性の高い他品種の花粉で授粉します。枝の先端に摘蕾し忘れた花がある場合、摘み取りましょう。
●摘果
着果確認後、果梗枝が太く、丸い果実、さらかむり果実を選び、1果叢1果に制限します(図)。
その後、小果、変形果などを落とし、2果叢に1果・成熟時に果実と果実の間にもう1個果実が入るくらいを目安に仕上げます。
▲形が良く、果梗枝の太い果実を残す
●袋掛け
晩生品種や病害虫被害の多いところでは、袋を掛けます(図)。外観向上効果も期待できます。
▲果軸に掛けるか、枝をまたいで掛ける
●新梢・着花管理
不要な枝は早めに除去します。「あきづき」など花つきの悪い品種では6月下旬頃、新梢を斜め45度くらいに誘引して、花芽形成を図ります。果実より手前の枝は、誘引、捻枝またはせん除を行い果実の先にある新梢の伸長を促します(図)。
翌年度の結果母枝になりそうな枝を、予備枝として確保してください。毎年、全体の枝数の1/4くらいを更新していきましょう。
▲上:花芽(長果枝) 中:葉芽(予備枝) 下:花芽(短果枝)
●収穫
果皮が十分着色して、酸味が抜けたころ、収穫します。開花後日数や食味、後期落果なども参考にしてください。「あきづき」は、果頂部(軸の反対側)に緑色のわっか(リング)があるうちはまだまだですが、遅れると落果します。
●病害虫防除
防除・施肥こよみ(※)を参考にしてください。近くにビャクシン(貝塚伊吹)があると、赤星病の発生が多くなります。農薬を使用する際は、農薬使用基準を遵守し、農薬使用履歴を記帳してください。
●施肥例
冬(12月:元肥)、果実肥大期(6月:追肥)、収穫後(8~9月:お礼肥)に施用します。
(※)防除・施肥こよみについては、お近くの営農生活センターへお問い合わせください。Web(HP)からも入手できます。
●ひとこと
どこかの産地では、ナシやリンゴの皮むき大会が行われています。ご家庭や職場でやってみるのも面白いかもしれませんね。太さとか制限時間を決めておかないと、大変なことになるかもですよ。