パンジーの管理 ~播種~
[2019.08.01]
●営農技術指導員 大澤梅雄
質問
パンジーの苗を年内に出荷したいと思っています。いつ頃種を播けばよろしいですか?
回答
パンジーの夏播きは、いかに涼しい環境を作るか、いかに病気を発生させないかにかかっています。直売所出荷者の皆さんは、盛夏に種を播くことはあまりないかもしれませんが、パンジーの夏播き技術を習得すれば、どんな花でも対応できるようになりますので、是非挑戦してみてください。
1 パンジーの発芽適温
発芽適温は20℃前後です。当地ではちょうど9月下旬~10月上旬の気温に相当します。
2 年内出荷の播種時期
発芽適温下にある9月下旬頃に種を播けば難なく発芽し春に開花しますが、花付の苗物を販売するとなるとそれよりも早く開花させねばなりません。
8月下旬播種で早春出荷、8月上中旬播種で年内から出荷できますが、発芽適温よりかなり高温となる8月の播種は大変難しい作型です。きめ細やかな管理が求められます。
3 播種準備
(1) 土は無病のものを使うよう心がけましょう。使用済みの土を使わず、新しい市販の培養土を用意します。
(2) セルトレーを再利用する場合は、十分水洗いするなり資材消毒剤「イチバン」の500~1,000倍液に瞬時浸漬またはジョウロで散布してください。また、出荷用の鉢は新品の3号ポリポットを用意します。
(3) 目標成苗率(出荷数/播種数×100)を50%としますと、100鉢出荷するためには200粒の種を用意します。
(4) 直売所へ出荷するならば、中小輪系よりも大輪系品種を、赤・白・青色系よりも黄色系品種の種子をやや多目に準備してください。また、中間色は当直売所では余り売れませんので少量にとどめてください。
(5) 苗の罹病を防ぐためにも播種後のセルトレーは、直接地面に置かないことが大変重要です。そこで、セルトレーを置く棚を作り準備します。
棚は高さ0.7~1m程度とし市販の支柱を組み立てれば簡単に作成することが出来ます。棚の上部と側面を遮光シートで覆います。寒冷紗は熱がこもりやすいので、遮光・遮熱効果が高く、風通しも良いダイオネットのほうが良いでしょう。遮光率は50%と70~80%の2種類を、色は黒よりもシルバーグレーを用意します。
3 播種
200穴のセルトレーに無菌の種まき専用の培養土を充填し、1穴に1粒ずつ種を播きます。覆土後軽く鎮圧し、新聞紙で覆い、潅水は底面給水とします。
4 播種後の管理
(1) 8月の気温は28℃で発芽適温よりかなり高く推移しますので、風通しが良く日陰となるような場所で管理するのが基本です。適当な置き場所がない場合は上述の棚で管理します。
(2) 雨の跳ね上がりによる立枯れを防ぐためにも、セルトレーを棚に置き遮光ネット下で管理します。
(3) ジョウロ潅水は発芽後の幼苗を倒してしまい、それがもとで枯れてしまうこともありますので、潅水は底面給水の方が良いでしょう。
(4) この時期は数日で発芽してきます。数本発芽すれば新聞紙を取り除いて下さい。発芽が揃ってから新聞紙を取り除いていたのでは、胚軸(子葉下の将来茎となる部分)が徒長してしまいますので、毎日発芽状況を確認してください。
(5) 発芽が揃えば苗の徒長防止のために、遮光率50%のネットに張り替えます。
5 病害防除
成苗率を高めるには立枯れ性の病気を適正に防除することが大切です。
(1) 疫病
葉が水浸状となり枯れてしまいます。疫病発生初期にオラクル顆粒水和剤2,000倍液をポット使用土壌1ℓ当たり100㎖潅注します。使用回数は3回以内です。
(2) 根腐病
心葉が黄~白化して立枯れ症状となります。発生し始めたらベンレート水和剤2,000倍液をセルトレー(60×30cm)当り500mlを潅注。7日後に再度潅注してください。
6 鉢上げ
播種後30日ほどで本葉4枚程度に生育しますので、3号ポリポットに鉢上げします。
7 出荷
11月下旬~12月に出荷できます。