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休眠期の病害虫防除

[2024.01.01]

●営農技術指導員 須崎静夫●  

●はじめに
 この時期、カンキツ類を除いて、ほとんど果実の収穫が終わっています。病害虫も冬眠したり、活動が鈍くなったりします。休眠期防除を徹底することで、生育期の発生をかなり抑えることができます。休眠期に行ないたい耕種的・物理的な病害虫防除を中心に紹介します。
●罹病枝・枯枝の除去
 整枝剪定の時には、見てわかる罹病部・被害部はもちろん、怪しい部分も取り除きます。細い枝はそのまま剪除し、太くて剪除できない場合には、ナイフなどで削り取ります。切り口には農薬登録のある保護剤を塗りましょう(これは、化学的防除)。   
 秋芽・秋枝は、充実が悪く、病原菌に感染している確率が高いので、外します。
 カキのヘタや番線などに巻き付いたキウイフルーツ・ブドウのツル・巻きひげ・果梗枝などもていねいに取り除いてください。寒い剪定時に、固く絡みついたツルや巻きひげを、ごちゃごちゃ取り除くくらいなら、生育期に巻きつかないように、こまめに外した方が賢明かもしれませんね。
●剪定枝・落葉の処分
  焼却・野焼きは、法律や市町条例などにより、かなり規制されています。家庭果樹で少量なら、ゴミ袋に入れて回収してもらいましょう(図1)。

▲図1:落葉 落葉は、穴を掘って埋めるか、ゴミ袋に入れて回収してもらいましょう

 生・半生の剪定枝を埋めると、紋羽病の発生を助長します。チップ化・粉砕しても、すぐには埋めずに、鶏ふんや米ぬか、化成肥料などの窒素分を加えて堆肥化したり、草よけマルチに使ったりすると良いでしょう(図2)。

▲図2:整枝 剪定枝は、チップにして堆肥化・雑草よけマルチに利用できます

 果実を吸汁するカメムシ類は、落葉の中でも冬眠しているといわれます。落葉も、綺麗に回収するか、吹き溜まりになりそうな所に溝を掘って、集まったころに、埋めてしまいましょう。
益虫のテントウムシの成虫やカマキリの卵嚢などを見つけたら、安全な所に避難してもらいましょう(これは、生物的防除)。
●中耕
 土壌を耕すことで、寒さに晒して、地中にいる害虫を退治したり、落葉をすき込んだりできます。細根の発生を促したり、雑草の発生を遅らせたりする効果もあります。
●捕殺
  カイガラムシ類をワイヤブラシ、軍手などで、こすり落としたり、潰したりします。カイガラムシ類の多くは、あまり動かないので落ちると、やがて餓死してしまいますが、また、知らないうちに増えていますね。
●粗皮削り
 カキやブドウの粗皮下に、害虫類が冬眠しに集まってきます。早めに粗皮を削ることで冬眠させない、遅めに削ることで冬眠中を襲うかのどちらかになります。雨後の粗皮が湿った時に行うと効率的です。キウイフルーツやナシ・モモなど、他の樹種でも粗皮がはがれそうということは病害虫が潜みそうなので、削り過ぎない程度に、削ってください(図3)。

▲図3:粗皮削り 雨後の樹皮が湿っているときに行うと効率的です

●環境整備
 排水路・明渠(溝)・暗渠の整備などを行ない、排水性を改善することにより、果樹の生育が良くなり、病害虫の発生を抑えることができます。病害虫の住みかとなっているであろう、周りの耕作放棄地の整備や周辺の雑草除去なども効果がありそうです。防風垣も、3・6・9月頃に、風よけできて、病害虫の発生源にならない程度に刈り込むとよいでしょう。

▲図:ゴミ回収お願い娘ズ 左からカエル、犬、ウサギ、猫柄の回収袋に入れています

 
▲図:天敵捕まえ隊(カエル、ヤモリ、クモ、カマキリ、テントウムシ)
この時期のカマキリは卵嚢かもしれません

●ちょろっと一言:耕種的防除と物理的防除●
 耕種的防除と物理的防除は、よく似ているので、こんがらがってしまいますね。
たぶん、耕種的防除は、人力の他、管理機・剪定ばさみ・スコップのような機械や道具を使用して行う方法です。物理的防除は、マルチや防風・防虫網、果実袋のような資材を設置する方法ですね、たぶん。雑草抑制のため刈った草を敷くのは、耕種的防除でも、購入した稲わらを敷くのは物理的防除かもしれません。溝を作るのに、スコップで掘るだけなら耕種的防除で、U字溝を埋めたら物理的防除かもしれませんね。間違っていたらごめんなさい。

●ちょろっと一言:テントウムシのはなし●
 ウメの枝に寄生している「イセリアカイガラムシ」の近くには、たいてい天敵の「ベダリアテントウ」がいます。知らないと、このテントウムシまで害虫にされてしまいます。あまり艶っぽくなく、幼虫もトゲトゲで、人相というか、虫相の良くないのも災いしているかもしれませんね。個人的には、艶っぽい「ナミテントウ・黒に赤丸2つ」が好きです。

▲艶っぽいテントウムシ4人娘

●ちょろっと一言:白い虫のはなし●
 お問い合わせで、「枝が白い」とか、「葉っぱが黒い」といわれれば、まず、カイガラムシ類の仕業です。白いのが本体で、黒いのがフンから出たカビです。奴らにも、いろいろあって、同定まではお手上げで、わかるのは、「イセリア」か「ヤノネ」と大まかな「コナ」か「ロウ」までです。春先に飛んでいる雄成虫なんぞは、とんとお目にかかれないのに、自然の摂理か健気に律儀に毎年きちんと発生していますね。
最近は、コナジラミとかハゴロモの幼虫も、ピョンピョン飛んでいます。

●ちょろっと一言:法律のはなし●
 農業関係でもいろいろな法律に縛られています。農薬関係だけでも、農薬取締法(以下、簡略表記、というか正式名を知りません)、食品衛生法とかPRTR法(綴り?)、消防法とか毒劇法があります。剪定枝の処分・焼却に関しても、廃掃法だけかと思いったら、ダイオキシン規制法とかもありますね。
ちなみに、焼却できるのは、農業生産における剪定枝のような燃やせる有機物残渣とか、焚火・どんど焼きのような慣習とか、災害対応などに限られているそうです。

▲図:ニャンズ

●ちょろっと一言:カマキリのはなし●
 秋も深まると、カマキリがのんびりと日向ぼっこをしています。見かけると、ついつい、遊んでもらっています。おなかプニュプニュの「ハラビロカマキリ」と、精悍な顔つきの「コカマキリ」が好きです。

▲図:カマキリむすめ~ズ 左:ハラビロカマキリ 右:オオカマキリ&コカマキリ

 

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