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果樹の病害虫防除

[2021.12.01]

●営農技術指導員 須崎静夫● 
 雨の多い時期には病害が、高温乾燥が続くとハダニ類・アザミウマ類が、果実が成熟すると吸蛾類やカメムシ類が、飛んで来ます。果樹栽培でも、病害虫を減らすことがポイントです。
 病害虫防除には、発生の少ない品種を選ぶ、日当り・風通し・水はけの良い環境をつくる、適正な施肥・かん水に心がけるなどの農薬を使わない耕種的防除を基本に、農薬使用などの化学的防除や天敵利用などの生物的防除を組み合わせてください。

●考え方
 現在は、総合的病害虫・雑草管理(IPM)という、経済的には損失のない程度までは病害虫や雑草の発生を許容するという考え方が主流です。
 当地域では、イチジク・ウメ・カキ・カンキツ・ナシ・ブドウ・モモ(以上、経済栽培用)とキウイフルーツ・クリ・スモモ・リンゴ(以上、家庭果樹用)の防除こよみがあります。これには、発生消長に合わせた農薬以外の効果的、合理的なIPMも記載されています。毎年改訂しているので、最新版を利用してください(図1)。
 
▲図1 防除こよみの一部・例

●耕種的防除
 化学でも生物でもなく、ちょっと人間的っぽく行う環境に優しい方法です。
抵抗性品種・台木の利用や病害虫の発生源となる枯れ葉・雑草の除去、有機物の施用、土壌pHの矯正、雨よけ・かさかけ・袋掛けなどです。を整備して、排水性を改善することにより、果樹の生育が良くなり、病害虫の発生を抑えることができます。
 敷わらなども効果がありそうです(図2)。

▲図2 耕種的防除 
(左から)イチジク・カキ・キウイフルーツ・ブドウの樹
例:落葉を処分する。粗皮を削る。
  イチジクのミイラ果・カキのヘタ・キウイフルーツやブドウの果梗枝・つる・病害虫被害部
  などを除去する。

●物理的防除
 害虫の捕殺、防虫ネットや雑草抑制シートの利用、太陽熱での土壌消毒などがあります。

●化学的防除
 化学合成農薬や天然由来農薬を使用する方法です。農薬を使用する際には、感受性低下を防ぐために、国際団体CLI(CropLife International:世界農薬工業連盟)が設定したFRACコード(殺菌剤)やIRACコード(殺虫剤)を参考に、同一系統農薬の連用を避けた輪番散布に心がけてください。
 ミツバチや天敵にも配慮しましょう。

●生物的防除
 マリーゴールドによるセンチュウ駆除やヤモリ・カマキリ・クモなどの益虫、生物資材など、生物や生物由来資材を用いる方法です。ただし農薬取締法では、これらも、登録されると農薬に分類されてしまいます。
 テントウムシ類やカメムシ類の中には、益虫も害虫もいます。

●農薬使用時の注意
 農薬を使用する前に、農薬以外の方法があるかどうか考えてください。農薬使用にあたっては、病害は予防(発生を未然に防ぐ)に、害虫は早期発見・早期防除に重点をおきます。
 農薬を使用する際には、ラベル等に記載されている農薬使用基準(対象病害虫・使用方法・使用濃度・収穫前日数・総使用回数など)の遵守、飛散の防止、使用前後における周辺周知、使用履歴の記帳、鍵のかかる所への適正な保管、期限切れ農薬や使用済み容器の適正処理などにも心がけてください(図3)。
 使用する際の健康状態にも留意し、体調の悪い時には控えましょう。
 また、農薬は毒性によって、毒物・劇物・普通物に分類されています。できるだけ毒性の低い普通物を使用してください。


▲図3 農薬袋・ラベルの表示例 上図:おもて 下図:うら
(丸数字部分が、表示事項です。商品により、記載順序が異なることがあります)

●ひとこと
 台風が多いと、見慣れない害虫が飛んできます。冬が寒いと翌年の害虫の数もぐっと減るみたいです。ほどほどに暑くてほどほどに寒いのがやはり一番ですね。

▲農薬散布を練習する編集担当コンビ
左の動力噴霧器は動噴、右の走行型散布機はSS:エスエスと呼ばれます。

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