果樹の鉢植え栽培②
[2024.03.01]
●はじめに
鉢植え栽培2回目は、栽培管理の総論です。樹種別の各論あれば、そちらも参照して下さい。
●施肥・かん水・土壌管理
植えつけ後の管理は、地植えと同様です。枝を伸ばしたい・樹を大きくしたいのか、あまり大きくしたくないのかどちらでしょうか。苗木の植えつけ後、2・3年で花が咲くようになります。実を成らせるかどうかは、樹勢、葉っぱの枚数など、樹の生育状況と相談してください。
施肥は、生育に合わせて行います。発芽前に元肥を、開花から果実肥大期に追肥を、収穫前後にお礼肥を施用します。鉢植えでは水やり頻度が高いため、肥料分も流れてしまいがちです。10号鉢なら、4月~10月まで、毎月、IB化成を10粒ずつくらい施用すると良いでしょう。よく観察しながら、加減してください。
かん水は、土壌の乾き具合と生育・葉の萎れ具合に合わせて行います。開花期・果実肥大期にはたっぷりと、成熟期前には、葉がしおれない程度のやや乾燥気味にすると、糖度の高い果実が期待できます。イチジク・キウイフルーツは、乾燥に弱いので、こまめにかん水したり、わらやチップを敷いて乾燥防止に努めたりしましょう。
雑草が生えたり、鉢土が少なくなったりしたら、適宜対応してください。葉色が薄くなったら、化成肥料や液肥を施用するか、(気休めに)栄養剤・アンプルを差し込みます(図1)。
【素焼き鉢を地面に埋めると水やりの省力になります。鉢底孔から根が出ないように…】
2~3年に一回、3月の休眠期に鉢土を半分から全部を交換すると良いでしょう(図2)。
【2~3年に1度、根を切り返して鉢の培養土を半分~全部入れ替えます】
根がびっちりの場合は、太い根を切って新しい根の発生を促します。大きくなりすぎたら、鉢上げするか、地植えするか、次の苗木に更新します。反対に、根がほとんど張っていない原因には、過湿・水のやりすぎやコガネムシ類幼虫の仕業などが考えられます。対処してください。
●枝梢・着果管理
鉢の大きさに合わせて管理しましょう。地上部の大きさは、鉢の大きさの2~3倍までを維持します。剪定時期は、落葉果樹が休眠期(12月~3月)、常緑果樹が発芽前(3月)です。樹種・花芽に合わせて、間引き・切り返し剪定を組み合わせます(図3)。古い枝を剪除して、新梢の発生を促しつつ、花つき・実つきを確保しましょう。伸びすぎそうな枝は、芽かきで落とすか、先端を軽く摘心します。葉っぱが気持ち少なく、かつ、小さくなるので、果実を少なめ・葉果比を多めに制限します。成らせ過ぎは後々の悲劇を招きます。
<芽かき> <摘芯> <剪定 ㊤切り返し剪定㊦間引き剪定>
▲図3:鉢植え果樹の管理(芽かき・摘芯・剪定)
【樹勢・枝の伸び方や花芽のつき方に合わせて間引き剪定・切り返し剪定を組み合せます】
鉢底の穴から地べたに根が出てくれば、水やりは不要ですが、鉢植えでなくなります。勢いが良すぎると鉢が割れてしまうかもしれません。生育期にはみ出した太い根を切ると、ばたっと萎れたり、枯れたりしてしまうことがあります。注意してください。
●病害虫防除
病害虫の発生に注意し、罹病部の除去、害虫の捕殺など早めに対処します。
果実へ袋掛けすると、病害を減らせます。雨のかからないところへ置くと、病害を減らすことができますが、ハダニ類・アザミウマ類の発生が心配されます。
カイガラムシ類はブラシか軍手はめてこする、アブラムシ類は腰に手を当てて牛乳を飲む、ハダニ類は葉水することで生息数を減らすことができます。
そのまま使える簡易な殺菌・殺虫スプレーも販売されています(図4)。
【周辺への農薬飛散を防ぐため、ビニールで鉢植え全体を覆って農薬を使用します。
そのまま使用できるスプレー式農薬が販売されています】
おもな樹種については、家庭果樹向けの防除・施肥こよみがあります。参考にしてください。Webからも入手できます。農薬を使用する場合は使用基準を遵守し、使用履歴を記帳してください。
●ちょろっと一言:鉢植え果樹で大儲け!●
月刊誌「現〇農〇」に、ときどき掲載されます。種苗法に触れなければ、自家増殖に挑戦です。露地で育てると管理も楽で、早く大きくなりそうです。
イチジクなら、挿し木1~2年でできそうです。葉っぱが健全で、小さな果実が3つ4つも着いていれば、と思いますが…。
ポポーなら、実生3年で50cmくらいになり、5~6年で実が成ります。
グァバは熱帯性の割に、戸外でもあまり傷まずに越冬して、丸い葉っぱを広げ、調子がいいと花を咲かせ、実を成らせるみたいです。
「買うと高いのに、売ると安い」のは、経済の法則でしょうか。
▲鉢植え栽培