柿の栽培
[2020.12.01]
●営農技術指導員 須崎静夫●
東アジア原産の果樹で、温暖地域では甘柿が、冷涼地域では渋柿が主に栽培されています。紅葉も、料理に野趣を添えてくれます。授粉樹には「禅寺丸」など、雄花の咲く品種を利用します(図1)。定植後、2・3年は生育が緩やかです。新品種も増えてきました。果皮にできる黒い筋「条紋(じょうもん)」は、あまり好まれないみたいですが、美味しい目印ともいわれます(図2)。
~年間管理~
・整枝せん定
樹形に応じて、せん定します。主枝、亜主枝の先端など、伸ばしたい枝は、葉芽の上で強く切り返します。枝の先端に花芽があるので、間引き主体とし、ヘタの残骸などもていねいに外します。樹が大きくなりすぎた場合は、少しずつ樹高を切り下げるとよいでしょう。
・芽かき
樹高切り下げなど、強くせん定した場合は、主幹や主枝から発生する不要な不定芽を早めに取り除きます。
・摘蕾・人工授粉・摘果
開花前から摘蕾すると、実のつきが良くなります。下向き、正方形で大きなヘタのついたつぼみを1枝あたり1・2個に制限します。「太秋」には、雄花がつきます。
花蕾数が多ければ、遅れ花(収穫時の果実は小さい)、変形ヘタの花(変形果になる・すでになっている)、上向きの花(夏の日差しで日焼けする)、もとの花(少し小さい、枝に挟まれるかも)の順に落とします(図3)。前年に成らしすぎて、花蕾数が少なく、遅れ花しかない場合には、残してもよいでしょう。
実つきの悪い品種は、開花の始めと盛りの頃2回程、ていねいに授粉します。授粉樹の雄花を直接、または、あらかじめ採取した花粉を石松子(せきしょうし)などで増量して雌花へ授粉します。特に、「富有」は、受粉して種子が入らないと実が成りません。「筆柿」「西村早生」のような不完全甘柿は、種子がたくさん入ると甘いカキになります(図4)。単為結実性が強く、種子が入ると裂果しやすい「次郎」では、かえって授粉しない方がよいでしょう(図5)。
7月頃、生理落果が終わったら、ヘタが大きくて、形の良い下向き、横向きの果実を残します。葉果比25(葉と果実の割合:葉25枚で1果)、1枝1果を目安にしてください。果実が大きくなると、重みで枝が下垂するので、なるべくもとから2・3番目の果実を残すとよいでしょう。
・収穫・脱渋・干柿づくり
甘柿は、十分着色したら収穫します。果梗枝で他の果実を傷つけないように、2度切りします。「太秋」は、少し青みが残る方が、サラダっぽくて美味しいです。
渋柿も、少し青みが残る八分着色で収穫して、焼酎、アルコールや炭酸ガス(ドライアイス)などで脱渋します(図6)。袋掛けした小袋に固形アルコールを入れる、樹上脱渋という方法もあります。脱渋のしやすさには差があり、大きな「江戸柿(富士)」は熟柿で渋が抜けます(図7)。干柿にするなら、枝を短くつけて収穫します(図8)。
・病害虫防除
防除こよみを参考にしてください。農薬を使用する際には、農薬使用基準を遵守し、農薬使用履歴を記帳してください。6月中旬と7月中旬のカキノヘタムシガ防除を重点的に行ないます。イラガ、カメムシ類、カイガラムシ類にも注意が必要で、実が成っているうちに葉が落ちるのは落葉病です。
休眠期間中に粗皮削りを行なうと、生育期間中の病害虫被害を減らすことができます。
鳥害対策には、樹全体をネットで覆うか木綿・絹糸を張り巡らします。少しなら袋掛けでも間に合います。
・施肥例
休眠期(12月~:元肥)、果実肥大期(7月:追肥)、収穫前後(10月:お礼肥)に施用します。