種なしブドウの栽培
[2021.05.01]
ブドウといえば、「巨峰」か「デラウェア(以下、デラ)」という時代もありましたが、最近は2倍体欧州系大粒品種「シャインマスカット(以下、シャイン)」が人気です。種あり「巨峰」を丸ごと食べられる方もみえますが、普通に種なしで皮ごと食べられるのが、お子さんのお眼鏡にかなうかもしれません。
果樹では、世界で一番栽培されている品目です。つる性のため、いろいろな樹形が楽しめます。
●整枝せん定(棚仕立て・自然形整枝・種なし栽培)
落葉後の1月のうちに終わらせます(図)。2月になると、切り口から樹液が出て樹勢が弱ります。結果母枝を同じくらいの太さ(デラ:8㎜、巨峰:10㎜)で切り返し、重ならないよう誘引します。巻きづるもていねいに外します。
●芽かき
発芽後、数回に分けて強すぎや弱い芽・新梢をかき取ります(図)。種なし栽培でジベレリン処理を行なうため、気持ち、樹勢を強く保ちます。
●新梢の誘引
30~50cmに伸びた新梢から順次、水平に誘引します。
●花穂整形(かすいせいけい)
開花前から開花始めの頃、1本の新梢についた花穂3~5個のうち中央の1~3個を残し、形を整えます。「デラ」は新梢の長さ15㎝に1花穂の割合にし、岐肩(きけん)を落とします。「巨峰」「シャイン」は新梢の長さ30cmに1花穂の割合にし、花穂の先端を「巨峰」3.5cm、「シャイン」3cm程度残し、他を落とします。先端の形が悪い場合は、同じような形の花穂部分を使います(図)。
●ジベレリン処理(無核栽培=種なし栽培)
ジベレリンは剤型(水溶剤・液剤)、品種名(群)、使用目的、使用時期、使用濃度、フルメット液剤との混用など、いろいろ登録されています。添付説明書を熟読・理解した上で使用してください。
「デラ」の満開予定日14日前の目安は、発芽後30日後、展葉枚数10~12枚といわれています。確実に種なし化するためにも、樹全体の生育(展葉枚数)を揃えることがポイントです。
●摘房・適粒・袋掛け
「デラ」では、変形果房と種あり果房(ジベ処理忘れ)を落とし、1枝あたり1~2果房とします。「巨峰」「シャイン」では、着粒の良い果房を残し、1房30~40粒とします。枝3本に1果房、1葉1粒を目安とします。ハート形の粒を見つけたら、何かいいことがあるかもしれませんね(図)。
「デラ」で10~15房、「巨峰」「シャイン」で3房/㎡程度を確認しながら袋を掛けます(図)。
●収穫
果皮が十分に着色して酸味が抜けた頃に収穫します。「シャイン」も、緑色からほんのり黄色味がかる頃が良いでしょう。成らせ過ぎは、着色不良・糖度不足・次年度の着花不足を招きます。
●病害虫防除
「巨峰」「シャイン」は、防除こよみ(ブドウ・大粒系)を参考にしてください。農薬を使用する際は、農薬使用基準を遵守し、農薬使用履歴を記帳してください。
●施肥例
休眠期(12月:元肥)、果実肥大期(6月:追肥)、収穫後(9月:お礼肥)に施用します。
※防除こよみは、お近くの営農生活センターへお問い合わせください。HPからも入手できます。
▲図1 せん定
犠牲せん定:1芽先のところで切り返す
▲図2 芽かき
①強すぎる芽
②弱い芽を外し、全体の生育を揃える
③副梢を使うこともある
▲図3 花切り
もとの花穂は変形
先端の花穂は小さいことが多いので、中央の2~3個を残す
▲図4 花穂調整(花切り)
・デラウェア:岐肩を落とす
・大粒種(種なし):先端の13~14段
長さ3.5cmを残す(「シャイン」は3cm)
先端が変形しているときは、形の良い部分を残す
▲図5 摘粒
はみだし粒や混んだところの粒、中に入り込んだ粒などを外す
大粒種
1房30粒~40粒を目安に、小粒(不授精)や変形粒、病害虫被害粒などを落とす
葉っぱ1枚で粒1個、新梢3本(40葉)で1房を目安とする