雑草管理
[2022.03.01]
●営農技術指導員 須崎静夫●
昔から「農業は、雑草との闘いだ!」と言われます。せっかく草刈りをしたのに、ふと振り返るともう次が伸び始めています。雑草は、養水分の競合や病害虫の住みか・発生源となり、ごみの不法投棄も招きます。周辺の方の理解を得られるような管理に努めましょう。
●雑草とは
「栽培者の意に反して育つ植物」です。果樹園では、カラスノエンドウ・ナズナ・ハコベ・メヒシバなどの一年生雑草と、ギシギシ・スギナ・タンポポなどの多年生雑草があります。雑草管理には様々な方法があるので、いろいろと組み合わせてください。許可を貰って、ウシやニワトリ、ヤギさんに草刈りをお願いしても良いかもです(図1)。
▲図1 草刈り隊
(下から)ウシ・ヤギ・ニワトリさん
●清耕栽培
トラクターや管理機などで園地を綺麗に耕す方法です(図2)。以前は、この方法が美徳とされました。果樹栽培では、収穫後から春先の根が動き始めるまでに1~2回中耕します。冬春に行うことで、春夏雑草の発生を遅らせ、地温が上昇し、果樹の生育を促進します。
一方、重機により土壌が固くなる、休眠種子の発芽を誘発する、傾斜地では土壌流亡する、時期を間違えると果樹の生育を遅延させるなどの影響もあります。生育期間中に浅く中耕することもあります。
▲図2 清耕栽培
休眠期を中心に園地全体をトラクターなどで耕起
●敷きわら・敷草栽培
株もとや園地全体に稲わらや麦わら、河川敷などから集めた刈草を敷く方法です(図3上)。有機物補給と雑草抑制の効果があります。ただし、麦わらなどは時にハダニ類やアザミウマ類などの発生源となることがあります。わらや刈草に含まれるカリ成分が増えるとも言われています。
●雑草草生栽培
雑草の定義に反しそうですが、雑草を果樹生産に活かすため定期的に草刈りする方法です(図3下)。草刈りすることで、管理しやすい一年生雑草が優先して繁茂するようになり、有機物補給や土壌の流亡・乾燥防止などの効果が得られます。
▲図3 敷きわら・雑草草生栽培
上:株もとに敷きわら 下:株もと以外を定期的に草刈り
●草生栽培
雑草草生栽培の改良版で、特定の草種の種子をまいて繁茂させて、前記の効果を得る方法です。草刈りは行いません。他の雑草を抑制する効果も期待されます。
種まき前には、除草や耕起など一部環境を整える必要があります。果樹栽培では、秋に種まきし、冬春に発芽・生育し、初夏に繁茂・開花、夏に枯死して、わらの代わりの敷草効果も期待します(図4)。
一年生の草種には、イタリアンライグラス・ナギナタガヤ・ライムギ(以上、イネ科)・ヘアリーベッチ(マメ科)などがあります。草で滑りやすくなったり、アブラムシ類が寄ってきたりすることがあります。翌年もうまくいけば同じ草種となりますが、種苗メーカーは毎年の種子更新を謳っています。
▲図4 草生栽培
①秋の種まき ②冬春の発芽・生育 ③初夏の繁茂・開花 ④夏の枯死による敷草効果
●除草剤の使用
園地全体、株もと以外、株もとだけ、防風ネットや支柱の足もとのような草刈りしにくい所にスポット処理する場合などがあります。砂質のほ場やイチジク・モモなど根の浅い樹種、幼木・若木では薬害が心配されるので、株もとへの使用は控えたほうが良いでしょう。
除草剤は、一年生雑草対象と多年生雑草対象、選択性と非選択性、茎葉処理と土壌処理、速効性と遅効性、地下部(根)まで枯らすタイプと地上部だけ枯らすタイプなどに分類されます。同一系統を使用し続けると、感受性低下により枯れ残ることがあります。
●まとめ
以上をまとめると、果樹園の雑草管理では、雑草草生栽培か草生栽培を基本に、収穫後から休眠期に清耕して、生育期には株もとに敷きわら・敷草して、草刈りしにくい所へは除草剤のスポット処理をするのが良いのかもしれませんね。
※除草剤は農薬に分類されます。使用する際には、農薬使用基準を遵守するとともに、農薬使用履歴の記帳、使用前後の周辺周知、飛散防止(薬害)などにも十分注意してください。
●ひとこと
最近は、カタカナしかない、見慣れない、聞きなれない雑草が増えてきました。なかなか(ほんとは全然)覚えられませんね。