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11月の果樹だより

[2019.11.01]

●杉山文一営農技術指導員

整枝せん定の基本とモモ・スモモ・ウメのせん定のポイント

1 基本的な考え方

(1)整枝せん定の目的

① 良品生産ができるように樹内部まで日射が入る。

② 生産性が高く栽培管理がしやすい樹形を作る。

③ 栽培管理作業がし易く、樹内部まで光が入り、薬剤散布ができる樹形にする。

④ 毎年安定した収量を得るために、主枝・亜主枝・側枝(結果部位)のバランスが良い樹形にする。

⑤ 生産性が高く、栽培管理がし易い樹形にする。

(2)せん定のポイント

① 毎年安定した収量を得るために、側枝と結果枝を、また着果する部分と新梢を発生させる部分をバランスよく配置する。

② 樹冠全体に日射が入るように枝を配置し、品質の揃った優良な果実を生産する様にする。

③ 防除薬剤が全体にかかりやすく、作業のし易い樹形にします。

④ 病害虫に侵された枝や病害虫の巣である枯枝を取り除き、病気や害虫の発生を防止すようにします。

⑤ 切除対象の枝は、①樹幹内部を暗くする「内向枝」、②主枝から樹内部に曲がった「逆行枝」、③主枝の裏面の「太い枝」、④主枝や亜主枝を負かす「徒長枝」、⑤下部の枝を暗くする「被さり枝」、⑥主枝・亜主枝から「下垂した枝」で、必要のない枝です。

⑥ 剪定量は、切除した枝・幹の量で30%以内とします。それより多いと、樹勢が乱れるか、衰弱します。

(3)基本的な樹形

立木仕立ての整枝法は、図1の様に2か3本を主枝として斜めに立て、各主枝に亜主枝と側枝(結果部位)を配置します。そして、樹全体が二等辺三角形になるようにします。

品種特性を重視し、良果生産や栽培管理作業に便利なように樹形をととのえます。

<枝の呼び方と特徴>

主 幹:地上から最上位の主枝の分岐点までの幹の部分

主 枝:主幹から直接分かれた枝で、亜主枝・側枝・結果枝を着ける樹の骨格になる枝

亜主枝:主枝から分岐した枝で結果部位である側枝を着け樹形の骨組みになる枝

側 枝:結果部位(結果枝)を構成する枝

結果枝:花芽と葉芽が形成され、果実をつける枝

徒長枝:発育枝のうちで、枝の直上から発生した強く長く伸びた新梢

(4)枝の切り方

枝の切り方は、図2の様に切り返しせん定と間引きせん定があります。

ア 切り返しせん定 

枝の途中で切るのが切り返しせん定で、強い新梢を発生させ骨格を作ります。

先端部を強く伸ばして骨格となる枝を育成する場合は、強く切り返します。

結果枝や側枝の先端を弱らせない場合は、先端を切り返します。先端が垂れた枝の勢力を回復したい場合は切り戻しなどを行ないます。

樹勢が良くなり、強い新梢が伸びますが花芽は着きにくくなります。

イ 間引きせん定

枝を基部から切るのが間引きせん定で樹勢を落ち着かせます。

樹勢が落ち着き、残った枝に花芽や結果枝が着きやすく、果実が着きやすくなるせん定です。

着果を良くするには間引きを主体にし、樹勢が強い場合や、混み合った枝や重なりあった枝を間引きます。

2 モモ・スモモ・ウメのせん定のポイント

(1)せん定時期

落葉する11月から始めますが、何時までに行なうかについては次のとおりです。

① モモは、3月になると花芽が動くので2月上旬までに行なう。

② スモモは、芽の動きが早いので1月下旬までに行なう。

③ ウメは、1月になると開花が始まるので12月下旬までに行なう。

(2)結果習性と結果枝の切り方

結果習性は図3のとおりで、今年発生した新梢に花芽が着くので強く切らない限り着果します。

(3)モモ・スモモ・ウメの整枝せん定のポイント

ア モモ・スモモ・ウメの幼木・若木のせん定

植えてから3年から4年で、主枝を2か3本決めます。そして、各主枝位に亜主枝候補を1本配置します。主枝を負かす枝や樹形を乱す枝は、側枝の形成・日焼け防止・枯れ込みを防ぐために、基部の枝を1か2本残して切除します。

イ モモ・スモモ・ウメの側枝(結果部位)のせん定

側枝(結果部位)は、図4の様に1年目に徒長枝を1/3に強く切り返して強い新梢を発生させます。2年目に発生した強い新梢は切り返して、3年目に中短果枝群を形成させます。

ウ モモのせん定の特徴とポイント

(ア) 特 徴

① 葉が大きく、若木の時は枝の伸長が旺盛で、多くの副梢が発生します。そのため、枝が過繁茂になる。

② 結実は早いが(4年から5年で)、生産性の寿命は短い。

③ 樹姿は、樹齢が経つにしたがい開張してくる。

④ 下枝が強くなる、下部優勢である。特に、若木のうちは、下部の枝が強くなる。

⑤ 日照要求量が高く、日照量が不足すると日陰の枝は枯れやすくなる。

⑥ 切り口の癒合が悪いので、冬季に太い枝を切らない方が良い。

⑦ 太枝は側枝や結果枝少なくなると日焼けになりやすい。

⑧ 主枝や亜主枝の先端部分の枝が少なくなると、先端部分から枯れ込むので注意する。

(イ) ポイント

① 主枝の発生位置は低いほど強勢であるので、第2主枝や第3主枝は、第1主枝のなるべく下の方から弱い枝を選んで育成する。

② モモは基部の枝が強くなり、樹内部が暗くなるので、樹幹の基部からでる枝は間引きます。

③ 樹冠内部の日当たりを良くするため、樹幹の基からでる新梢は間引き、主枝、亜主枝を外側に向けて斜めに伸ばしながら樹冠を広げます。

④ 亜主枝を下の方から取ると、全体に開きやすくなりますが、少し上の方から取ると、主枝を立たたせえることができます。

 ⑤ 主枝などの太枝に直射日光が当たると日焼けを起こすので、背面から発生した小枝などを多めに残します。

⑥ 上部の比較的強い枝を長年用いると、上部が長大化して結果部位が上部となるので、作業性を考えて早めに切り返して更新します。

⑦ 太い枝を切る場合は、秋におこなう秋季剪定の時期に基部に近い部分の枝を残して切除した方が良い。

エ スモモのせん定の特徴とポイント

(ア)特 徴

① 幼木期には新梢の伸長が旺盛であり、樹勢も強く樹姿は直立性を示します。

② 樹齢が進んで結果量が増えるのにともなって、樹姿は開張し始め横方向への広がりが大きくなります。

③ 成木期までに樹形を作ります。モモなどのほかの核果類に比べて生産性の高い樹齢は長い。

④ 花芽をつける枝は、長さによって、長果枝、中果枝、短果枝に区別されますが、結実は大多数の品種が短果枝主体で、短果枝に良品果実が結実します。

⑤ 新梢の伸びが旺盛なので、あまり強い切り替えしをすると、強い新梢が発生し良い花芽が着生しません。

(イ)ポイント

① 着果を良くするには、樹勢を落ち着かせ、短果枝を多く着生させることが重要です。

② 大石早生は枝が直立に発生し、成木になると樹高が高くなるので、若木のうちから骨格枝の添え木による誘引をおこない、低樹高化を図ります。

③ ソルダムのような開張性品種は、切り返しせん定を主体にして樹勢の維持を図る。また、主枝や亜主枝の骨格枝は、やや立ち気味に形成を図ります。

④ サンタローザのような直立性の品種は、若木の時は間引きせん定主体とします。

⑤ 太陽や貴陽は、枝が直立に発生し、樹姿がホウキ状になるので、若木から誘引をおこない、低樹高化にする。

⑥ 太陽や貴陽は、枝の発生が多いので、間引きせん定が主体となる。

⑦ 樹冠内部の日当たりを良くするため、樹幹の基からでる新梢は間引き、主枝、亜主枝を外側に向けて斜めに伸ばしながら樹冠を広げます。

オ ウメのせん定の特徴とポイント

(ア)特 徴

① 中果枝、短果枝は、優良な花芽が着生し、結実率も高く果実品質も良好です。

② 主幹は立ちにくく、新梢の発生が多く、その伸びが大きい。また、頂部優勢性が強く、先端が伸びやすい。

③ 日陰の結果枝は枯れやすいので、樹全体にどの枝にも光が当たるようにします。

(イ)ポイント

① 結果枝は、長果枝(30cm以上)、中果枝(5cm以上)、短果枝(5cm以下)ですが、優良な中果枝、短果枝を配置することが重要です。

② 樹形を乱し、長枝や樹冠内部の日当たりを阻害するほど大きくなった側枝等の不要な枝は切り返します。

③ 混んだ枝は間引きますが、樹勢の弱い樹は切り返しせん定を多くし、強い新梢を発生させます。

④ 早く結実してほしい若木は、間引きせん定を多くして樹勢を落ち着かせます。

⑤ 若い結果枝や側枝の維持を図り、側枝を切り返して更新を行います。

⑥ 側枝の先端が下垂して樹勢が衰弱している場合は、基部より発育枝まで切り返して、強い新梢を発生させます。

 ⑦ 太枝を少なくし、樹内部に日光を当てて結果枝を多くし、新梢発生と2年枝から3年枝の確保を図ります。

⑧ 側枝の切り返しを多くし、古くなった結果枝部位(4年から5年枝以上)は常に更新を図ります。

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