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3月の果樹だより

[2020.03.01]

●杉山文一営農技術指導員

柑橘類の整枝せん定と春先の管理

 尾張中央農協管内では、ファーマーズマーケットやグリーンセンターで地元生産者の直売や遊休地利用での楽しみのひとつとして、様々な柑橘類が栽培されています。全国の柑橘産地では、栽培環境や品種に応じて整枝せん定方法や程度が異なります。今回は尾張中央農協管内の産直出荷者や家庭果樹を対象とした整枝・せん定について解説いたします。温州ミカンと中晩生柑橘類の整枝せん定のポイントは基本的には同じですが、品種の特性により異なります。

1 柑橘類の整枝せん定のポイント
(1)整枝せん定の目的
 整枝せん定は、①樹冠内部まで日射が入って果実品質を向上させること、②薬剤の付着効率を高めて病害虫の発生を少なくすること、③作業性の楽な樹形にする、④毎年安定的に着果することを目的に行います。

(2)せん定の時期
 せん定は、温かくなる3月上旬ごろからおこなう方が良く、早くからせん定をおこなうと、寒波にあって異常落葉することがあります。
 柑橘類は無霜地帯での産地は、2月中旬頃からせん定をおこなっています。しかし、日中が暖かくなった3月上旬頃からおこなった方が寒さの害も避けることができ無難です。柑橘類は亜熱帯原産で、寒さに弱い果樹です。寒い時期にせん定すると寒風が樹幹内部まで通り、寒波が原因で落葉し樹勢が弱る原因となります。葉が多くあるほうが耐寒性が高まり、寒さに強くなります。

(3)柑橘類の基本樹形
 柑橘類の樹形は、図1の様に開心自然形が一般的です。整枝は、主枝を2本から3本とし、各主枝に亜主枝を1本配置します。主枝と亜主枝に側枝を配置し樹全体と各枝が二等辺三角形になるように整枝します。そして、樹間内や結果部位に日射が入るようにします。
 せん定は、①樹高の切り下げ、②内向枝・主枝との競合枝の切除、③逆向枝の間引き、④亜主枝から出た立ち枝の間引き、⑤亜主枝に重なる枝の切り返し、⑥長い亜主枝や側枝の切り戻し、⑦地際の下垂枝の間引き、⑧枯れ枝(年間)などを切除します。
(樹形と枝の呼び方)
①主幹:地上から最上位の主枝の分岐点までの幹の部分
②主枝:主幹から直接分かれて出た枝で、亜主枝、側枝を着け樹形の基礎になる枝
③亜主枝:主枝から分岐した枝で側枝を着け、主枝と並んで樹形の骨組みになる枝
④側枝:結果母枝や結果枝を着ける枝で果実を生らせる部分

(4)1年枝の特徴は、下記のとおりです。
①発育枝:葉芽または葉だけをつけている枝、また、翌年に結果母枝となる新梢を出す枝
②結果母枝:発育枝として発生した枝で、翌年に結果枝を出す枝
③結果枝:花が咲いて、果実を付ける枝
④徒長枝:発育枝の中で長大に成長した枝
 図2の結果母枝は緑枝の発生でせん定前の状態です。果実をつける枝を出すので、混んでいない場合は切り取らない。
 図3は収穫痕の部分で、せん定前の状態です。果実をつけない緑枝を出す枝は、せん定の対象となります。

▲図2 翌年の結果母子

▲図3 収穫痕の部分

(5)枝の切り方の基本
 せん定は基本的樹形で述べた様に、①かぶさり枝である強い立ち枝は、基部から切り取って下部に日射が入るようにします。また、②今年果実が生った部分を切り戻して、側枝を切り替えます。切る枝として、③徒長枝、④平行枝、⑤逆行枝、⑥交差した枝、⑦下垂枝を除きます。せん定量は品種にもよるが、樹全体の20~30%程度とする。青島温州のような樹勢の強い品種は、10%程度としてください。
剪定は毎年おこなった方がよく、混んだところや、被さった枝を3~4ヵ所切除するだけでも効果があります。
 樹高を下げる場合は、主枝の途中で切り返すと強い新梢が発生するので、比較的強い枝のあるところで切り返します。

(6)結果習性と側枝の作り方
 柑橘類は、本年伸びた新梢(結果母枝)の先端部分に花芽を形成し、翌年の春に伸びた先端部分の新梢(結果枝)に花が咲いて果実を着けます。
 『柑橘類は前年に伸びた枝を切り戻すと新梢が伸びて果実をつけません』なので、前年の春や夏に伸びた新梢を、途中で切り戻さないで下さい。
 果実の着き方は、結果母枝性と言って、前年に伸びた枝の先端部から、今年の春に伸びた新梢に花が咲き、果実をつけます。
 結果部位を毎年確保するには、側枝の更新が必要です。温州ミカンの果実のつき方は、結果母枝性で、前年枝の先端から今年の春に伸びた新梢に花が咲き果実をつけます。側枝の更新を図るには、図4の様に本年の結実部分を切り返して翌年の結果部位に更新します。また、本年の結実部分である強い立ち枝を間引いて、翌年の結実部分に光が入る様にします。

 また、①樹勢が弱く、結果部位が外側に多くなっている場合は、切り返しをおこなって樹勢を強くして側枝の更新を行います。②樹勢が強く立枝が多い場合は、強い立ち枝を間引いて樹勢を落ち着かせ、下枝に光が当たるようにします。
 側枝の更新は、①切り返して結果部位を更新する方法、②下枝に光が入る様に立っている枝を間引く方法があります。
 基本的には、果実に光が当たるようにしてください。果実を着けた枝を中心に切り返すと、内部まで光が良く入り結果母枝となる新梢の発生が良くなります。この切り返した部分の枝を予備枝と言います。せん定の対象は、予備枝で果実をつけた枝を中心に切除しますが、枝が混んでいる部分は、結果母枝も切除します。

(7)結果母枝の残し方
① 充実した結果母枝を残すように心がけ、有葉花中心に着果させるようにする。
② 弱い結果母枝は着花し易いので除去し、着花数を減らすようにする。
③ 樹の表層部分は、樹内部より果実肥大が良いので優良結果母枝を多く残すようにする。

(8)強い枝と弱い枝のせん定の違い
 枝の直径が同じ場合、水平の枝に対しての角度が大きいほど強い枝になります。角度が同じなら、枝の直径が大きく長く伸びた枝ほど強くなる。図5の様に、強い枝は元から間引くが、弱い枝は先端部分を切り返すか弱い枝を切り返します。


      
(9)着果の多い場合と少ない場合のせん定の注意点
① 着果の多い場合
 優良結果母枝が少ないので、今年着果した部分を中心に切除し、樹形にこだわらず結果母枝はできるだけ多く残すようにします。
*結果母枝を多く残さないと、隔年結果の原因となる。
② 着果が少ない場合
 結果母枝が多いので、着果過多となりやすいので隔年結果する。切り返しを強くして、翌年の優良結果母枝である新梢を多く発生させるようにする。
 また、徒長枝の発生が多く、強せん定になりやすいので注意が必要です。徒長枝は、9月下旬から10月上旬に除去すると樹勢が落ち着きます。
(10)品種ごとのせん定のポイント
 尾張中央農協管内のファーマーズマーケットやグリーンセンターでよく見かける品種のせん定のポイントを表にまとめました。せん定をする時の参考にしてください。
 晩柑類の整枝せん定のポイントは、基本的に同じですが品種によって樹の特性に違いがあります。中晩柑類は樹冠内部に光が入らないと内部の枝が枯れやすく、また外層に良品果実が多く生ります。そして、品質優良な大玉果を生産するために、充実した良好な新梢を発生させ、有葉花を確保することが必要です。

2 春先の管理
(1)施肥について
 柑橘類は基肥が3月上旬で、礼肥が10月下旬頃です。中晩柑橘類は、収穫が1月に入ってからと遅いので、6月に追肥をおこないます。
 3月上旬は基肥を施用する時期です。基肥は4月~5月に吸収され、春枝の充実や開花時から幼果の肥大に使われる、重要な肥料です。
 施肥量は樹の大きさによって異なりますが、有機質主体の肥料を1樹当たり4kg程度施用します。収穫の遅い中晩柑橘類は、5kg程度施用してください。
 施肥方法は、土壌と混和することが重要であり、樹の周囲に輪状に施用すると良いでしょう。パーク堆肥や苦土石灰と溶リンも施用すると、樹が健全になり品質や収量も向上します。

(2)防除について
 レモンやユズ等で果皮に潰瘍の様な症状が出る「かいよう病」と言う病害をファーマーズマーケットやグリーンセンターで見かけます。春先に風が強く当たるところで多く発生します。一度発生すると、なかなか防除することができない難防除病害です。風が当たらないとこに植えるか、防風網の設置が必要です。
 薬剤散布は、4月中旬頃となります。防除はこよみを参考におこなってください。
 枯れ枝は、病原菌やダニ等の害虫の越冬場所となります。特に、枯れ枝は黒点病の病原菌の巣になってしまうので、せん定時に綺麗に除去してください。

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