4月の果樹だより
[2017.04.01]
●杉山文一営農技術指導員
農薬の適正使用と病害虫防除のポイント
1 果樹主要病害虫防除の基本的な考え方
病害虫防除は、病害虫の生態をよく知るとともに、農薬だけにたよるのでなく、病害虫におかされにくい健全な木をつくることが重要です。また、薬剤防除にたよるだけでなく、病気の越冬場所である、ブドウの巻づるを取り除いたり、せん定した病害枝の結果枝や新梢、落葉、病害虫被害果を土壌中に埋めたり園外に除去します。また、園内の風通しや排水をよし、防風林・防風垣の設置などの耕種的防除を組み入れた総合的防除が必要です。
(1)病害と害虫の防除の考え方
ア 病害防除
病害防除は、発生前の散布が重要であり予防的防除を基本に考えます。病害が発生していなくても、感染期には薬剤散布を行い病原菌の感染を防止します。また、病原菌は雨水で伝播するので降雨前に薬剤散布を行います。病原菌は、葉裏の気孔から植物体内に侵入するので、薬剤散布は葉裏にもしっかり散布してください。
病気の発生に気が付ついた時では遅く、病気の後追い防除となるため、 初期防除が重要です。
イ 害虫防除
害虫防除は、発生初期をねらって薬剤散布します。害虫に直接散布する治療的防除を基本に考えるため、害虫の発生を常に観察する必要があります。害虫が多発してからでは防除効果が落ちます。
天気の良い日が続くと、害虫の発生が多くなるので、特に、ダニ類の発生には注意します。
害虫は、幹や枝や葉裏に寄生するので、樹幹内への散布にも心掛けてください。
特にカイガラムシ類は、虫が皮膜で覆われていて薬剤が浸透しにくいので幼虫発生時に集中散布します。
ダニ類やアブラムシ類などは、数匹見えたら防除時期です。
(2)薬剤の特性
ア 殺菌剤
殺菌剤は感染防止効果が高い保護剤が多く、治療効果の薬剤が少ない。保護殺菌剤と浸透性殺菌剤に分けられるが、浸透性殺菌剤は治療効果がある薬剤が多い。
イ 殺虫剤
殺虫剤の殺虫作用は、①神経系阻害、②生育抑制、③筋肉収縮、④呼吸阻害、⑤脂質合成阻害、⑥タンパク合成阻害、⑦中腸阻害、⑧交尾阻害等がある。人畜毒性や残効性の関係で害虫の種類による選択性の高い薬剤が多く、りん翅目害虫、アブラムシ類、ダニ類などは効果のある薬剤の種類が異なるので注意する。
(3)効果的な病害虫の防除法
適期を逃すと病害虫の発生が拡大するので、常に観察をよく行い、降雨などの気象条件を踏んで防除する。散布量や散布の方向なども重要であり、風のない日に散布します。
①病害虫が発生してからの防除では、効果が低い。枝葉、果実に十分薬剤 をかけることが重要です。また、病害虫は葉裏に寄生するため、葉裏や樹間内へも十分に薬剤散布をします。
②散布適期を逃すと病害虫の発生が拡大する。気象条件を踏まえて防除す る。
③薬剤の選択に当たっては、殺菌剤耐性菌の発現や殺虫剤抵抗性がつきや すい。同じ薬剤を連続して散布すると抵抗性がつき、効果が低下しますので注意して下さい。
④薬剤の効果を高めるような整枝せん定の改善や風通しの良い園地整備を行います。薬剤は、樹全体に葉裏や樹間内部へも十分に散布することが重要です。
(4)農薬使用基準について
農薬取締法で規定する農薬使用者とは、食用に供される作物を栽培している者だけではなく、農産物等の栽培管理(家庭菜園やガーデニングなども含む)のために農薬を使用する者全てが農薬使用者に該当し、農薬使用基準を尊守する必要があります。
1 農薬使用者の責務
2 農薬使用者が努力すべき基準
3 農薬使用者が尊守
食用作物及び飼料作物に農薬を使用する場合は、農薬登録時に定められた次の事項を尊守する必要があります。
①適用作物
②単位当たりの使用量の最高限度
③希釈倍数の最低限度
④使用時期
⑤生育期間において含有する有効成分の種類ごとの総使用回数
ラベル記載例
○○○○水和剤(・・・・)
(5) 作物別の病害虫防除のポイント
表に主要な作目別に主要病害虫の防除の時期をまとめましたので、参考にして下さい。散布する薬剤は、農協の防除こよみに準じておこなってください。