5月の果樹だより
[2017.05.01]
●杉山文一営農技術指導員
落葉果樹類の着果管理とブドウのジベレリン処理
1 カキ・ブドウ・モモ・キウイフルーツの着果管理
大きくて美味しい果実をならせるには、1樹の着果数を減らして適正着果量にすることが必要です。着果量が多いと小玉が多く、大きくて美味しい果実が出来ません。幼果を間引いて、適正着果量にする作業が、摘果です。
(1)摘果の目的
① 美味しくて、大きい果実をつくるには、摘果をして着果数を減らすことが重要です。果実どうしの養分競合を少なくし、形・大きさを適正にする作業です。果実が着きすぎると、葉の光合成産物が多くても1果当たりの配分量がすくなくなり肥大が悪くなります。
② カキやブドウなどの結果母枝性の樹種は、着果数が多く、収量が多いと来年のための花芽分化が不十分となります。そのため、隔年で結実する隔年結果となるため、摘果をして隔年結果を防止します。
③ 着果数が多いと小玉の果実が多くなり、大きくて美味しい果実となりません。毎年大きい果実をならせるには、摘果といって着果数を減らし、適正着果量にすることが重要です。
(2)カ キ
摘果は品種によって多少の違いはありますが、富有が基本であり、図1の様に摘果します。残す果実は、ヘタが大きくて形の良い大きい果実です。
摘果の方法は、次の様におこないます。
① 40cm以上の結果枝は2果(中央部から基部方向)残す。
② 結果枝の中央部の横向きか下向きの果実を残す。
③ 10cm以下の弱い結果枝は全部摘果する。
④ 摘果時期は、早い方が効果が高いが、生理的落果が終わる7月中下旬に行います。
⑤ 摘果する果実は、病害虫被害果・傷害果・奇形果・小玉果・ヘタ小さくて変形な果実です。
品種別には、次の通りです。
⑥ 早秋は、時期は7月下旬で結果母枝1本当たり2果を残します。
⑦ 太秋は、時期は7月上旬で20cm以上の強い結果枝に1果とします。
* カキは、遅く着果制限をすると富有系品種においてヘタスキ果が発生し、品質が低下します。摘蕾・摘果と、7月中には着果制限をしてください。
(3)ブドウ
ア 大粒系品種(巨峰・藤稔)
① 摘粒をして図2の様に新梢の長さをプラスしてが100cm程度に1房(36粒:400g)です。
② 新梢は、重ならない様にします。
③ 摘房時期は6月上旬の袋かけ前です。
④ 残す果房は基部に近い5枚程度のところを残す。
⑤ 摘房する果房は新梢の基部と先の方についている房・小房・花ふるい房です。
イ 小粒系品種(デラウエア)
① 図3の様に新梢の長さが120cm程度に2房(1房:120~150g)着けます。
② 新梢は、重ならない様にします。
③ 残す果房は基部に近い5から6枚程度のところです。
④ 摘房する果房は新梢の基部と先の方に着いている房・小房・花ふるい房です。
*房作り(摘粒)
果粒肥大を促進し、玉揃いをよくするためには、摘粒は必要な作業です。ジベレン処理しない大粒系ブドウ(巨峰群)は、開花前に副穂と主穂上部の枝穂3分の2程度と、穂尻を1cm程度切除します。そして、1房の粒数は、35から40粒程度にすると粒の大きい房が作れます。デラウエア、マスカットベーリーA、サニールージュ等の小・中粒系ブドウは摘粒しません。
* 1房の粒数多い大房で、1樹での着房数が多いと収量が多くなり、着色が悪く、糖度が低い品質の悪い房になります。
(4)モ モ
摘果は、図4の様に結果枝の長さ別に、結果枝の中心から先の方の部分に、形の良い大きい果実を残します。
摘果の方法は、次の様におこないます。
① 摘果時期(最終)は5月下旬で、袋かけ前に着果量の制限をします。
② 早い方が効果が高いが不受精の区別がついてから行い、中段から下段を中心に摘果する。
③ 残す果実は、長果枝(30~50cm)に2~3果、中果枝(10~30cm)に1~2果、短果枝(10cm以下)3本に1果とします。
④ 摘果する果実は、小玉果・奇形果・病害虫被害果・生理障害果です。
⑤ 果実は中央から先の方向の部分に残します。
* モモは、摘蕾、予備摘果、本摘果と3回程度で着果制限します。遅く、1回で着果制限すると、小玉で核割れや裂果の原因となり品質の低下する原因となります。
(5)キウイフルーツ
摘果は品種によって多少の違いはありますが、ヘイワードが基本であり図5の様に大きくて形の良い果実を残します。
① 摘果時期は果実の形が確認できる6月中下旬までにおこないます。
② 着果程度は短果枝(10~30cm)に1~2果、中長果枝(30cm以上)に3~5果です。
③ 1つの葉えきから3つの花を生じるので、真ん中の1つを残す。
④ 新梢は重ならないようにします。
⑤ 摘果する果実は小玉果・奇形果・病害虫被害果です。
⑥ レインボーレットは、6月中旬に1結果枝当たり3果以内に残します。
* キウイフルーツは、6月中旬までに大きくなる形質ができます。6月下旬に小さい果実は大きくなりません。
2 ブドウの摘粒
① 1粒を大きくして形の良い房をつくるには、花穂の整形と摘粒を行ないます。1房の着粒制限をしてから、適正着房数と袋かけをします。
① 大粒系品種(巨峰・藤稔)は、図6の様に花穂お整形と小豆粒ぐらいになったら摘粒をして着粒制限をします。
② 花穂整形は、開花始めまでには終わるようにします。
③ 摘粒は、着果確認後に小豆粒大の時期におこなう。
3 ブドウのジベレリン処理
(1)ジベレリン処理
種無し果房にすると、食べやすく、熟期が早まります。種無し果房をつくるには、花穂をジベレリンに浸漬処理します。
〔処理時期と方法〕
ジベレリン処理の目的や処理時期・濃度・方法は、表1のブドウのジベレリン処理の目的と方法によっておこなってください。
デラウエアのジベレリン処理適期の把握は、表2を参考としてください。先端1㎝程度の部分で、未だ開花してない蕾がある時期です。
種無し果房をつくるために、花穂をジベレリンに浸漬処理します。
ジベレリン処理の方法の方法は、プラスチック容器にジベレリン溶液を入れて、これに花穂を浸漬します。ジベレンの調整法については、表3を参考としてください。
ジベレリン処理は2回おこないますが、1回目処理が無種子化で、2回目処理が果粒肥大です。
注意事項として、樹勢の弱い樹では有核粒が混入するので、樹勢維持に努めます。また、処理後8時間以内に降雨があった場合は、再処理します。
ベーリーAは、デラウエアに準じて処理します。
ジベレリン剤は、銘柄によって登録内容が異なるので注意してください。
ジベレリン液の作り方は、表3を参考としてください。
満開期は、図3を参考にしてください。先端1㎝程度の部分で、未だ開花してない蕾があるときです。
ジベレリン処理濃度は、品種によって違い、表の濃度でします。方法は、ジベレリン溶液をプラスチック容器に入れておこないます。作り方は、説明用紙を参照してください。
(2)花穂整形
ジベレリン処理する前に、図7の様な花穂の整形をおこないます。果粒が大豆程度の大きさなったら36粒程度に摘粒します。
時期は、ジベレリン処理前におこないます。