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ニチニチソウの管理~疫病~

[2024.07.01]

●営農技術指導員 大澤梅雄●

質問
 去年、学校花壇にニチニチソウを植えましたが、6月の梅雨時にほとんど立ち枯れ状態で枯れてしまいました。何がいけなかったのでしょうか。また、どんな防除方法があるのでしょうか。

回答
 校内美化と教育上の観点から、どこの学校も熱心に花壇づくりに取り組まれておられますが、その裏で関係者の方々の並々ならぬご苦労がある事は想像に難くありません。
ご質問の立ち枯れは疫病によるものと思われます。土壌病原菌の一種で発生を防ぐためには土壌を消毒することが必要です。何かと栽培上制約の多い学校花壇では、防除がむつかしく悩ましい病気です。そこで、手間はかかりますが薬剤に頼らない耕種的防除について説明します。

●ニチニチソウ(日日草)の特性
 インドやジャワ原産の春まき1年草で主に花壇に使われます。高温・乾燥に強く、草丈が30㎝程度に収まることから夏花壇の人気種です。日当たりと排水性の良い場所に植え付けるのがコツです。
●疫病とは 
 本病の病原菌はカビの一種で、高温多湿条件下で良く発生します。菌は被害残渣とともに土壌中に残り根から侵入したり、降雨やかん水により土粒とともに跳ね上がってニチニチソウの茎葉に取りつきます。
 被害を受けると新しい側枝の先端部からしおれ、葉は黄色くなり、下の方の葉から落葉し枯れてしまいます。本病は多犯性でサルビアにも感染し、地際の茎が黒くなるのが特徴です。
・発生原因
 一般的に学校花壇は大型ですが、大きいからと言って暗渠排水が施されているわけではないので、花壇中央部分は排水性が悪く、疫病が発生しやすい環境にあります。また、栽培する花の種類はほぼ毎年同じですので、連作障害も発生しやすいと思われます。
・耕種的防除
・太陽熱による土壌消毒
 ア なぜ太陽熱で土壌消毒できるのでしょうか
 モザイク病を引き起こすウイルスは90℃10分で死滅しますが、カビなどの菌類(立枯れ性土壌病原菌含む)は比較的低い40~60℃で死滅するといわれています。例えば、湿地性カラーの塊茎を腐敗させる疫病菌は、40℃15時間以上で死滅することが分かっています。
 このようなことから、太陽熱消毒は「植物病原菌の大半を占める菌類は比較的低い温度で死滅する」ということを応用した方法です。
イ 太陽熱で消毒効果を上げるには
 夏の暑い時期には耕土内はおよそ30℃くらいまで上昇しますが、消毒効果を期待するのであれば地温を40~60℃まで引き上げる必要があります。そのためには、①有機物が発酵する際に出す熱も利用し、石灰窒素や米ぬかなど発酵を促す補助剤を併用する。②高畝を作り土壌表面積を増やす。③土壌水分率を60%程度に保つことで熱伝導を高める。④熱量を溜めるために土壌表面をビニールフィルムで覆うなどを組み合わせると良いでしょう。
ウ 消毒時期はいつが良いか
 1年のうち最も暑くなる7月中旬から9月上旬頃までが適期です。
エ 消毒期間はどのくらい
 30日間は必要ですので夏・秋花壇は休みます。
オ 消毒手順は
 太陽熱消毒は次のような手順で行います。
 (ア)計画
 数ある花壇を一度に消毒するには大変な労力がかかりますので、年次ごとにどの花壇を消毒するか順番を決め、それに従い植栽の構想も練ります。
 (イ)片付け
 前作の茎・葉・根などの残渣を片付け、焼却処分します。
 (ウ)有機物施用
 稲ワラ1kg/m2、牛糞3kg/m2、米ぬか0.5kg/m2などをすきこみます。
 (エ)施肥
 石灰窒素を50~100g/m2施用します。
 (オ)畝作り
 花壇は良く耕し高畝を作ります。
 (カ)かん水
 ひと雨当てるか、潅水します。そして一日置いた後土を握ってみます。土が団子状態になり指で押せば団子が崩れる程度の水分状態であれば目標とする水分率になっています。
 (ケ)消毒開始
 ビニールフィルムで土壌表面をベタに覆うと同時にトンネル状にフィルムを被せます。被覆資材の端には土を乗せて熱が逃げないようにします。これで消毒開始となります。
 (コ)消毒終了
 開始後1か月が過ぎたらビニールフィルムを取り除きます。その際、フィルムの抑えに使った未消毒の土が消毒済みの土に混じらないよう慎重に作業を行います。これで土壌消毒は終了です。
 (サ)植えつけ             
 土壌の温度が下がれば直ちに植えつけられます。
追肥は単肥で過リン酸石灰と硫酸カリをそれぞれ20g/m2施すか500倍液の液肥を生育状況に応じて施しましょう。
 なお、せっかく消毒した花壇に病原菌を持ち込まないよう細心の注意を払って下さい。そのためには、スコップや鍬などの農具は最低限水洗いをしておき、靴は新しい靴に履き替えましょう。
(2)土の入れ替え
 最も古典的対策は土の入れ替えです。病気に汚染された土を深さ20㎝程度掘りだし、汚染されていない土と入れ替えます。これは確実な方法ですが太陽熱消毒以上に労力とコストがかかります。
(3)丁寧な取り扱い
 苗を植えつける際には根を切らずに植えてください。傷口からの菌の侵入を防ぎます。また、植付け後は土壌表面にワラやバーク堆肥などを敷き、雨やかん水によって土粒とともに菌の跳ね上がりを防ぎます。

参考文献
 平野哲司・中込暉雄・滝本雅明・大沢梅雄・金原義浩,太陽熱消毒による湿地性カラー疫病の防除,愛知県農業総合試験場研究報告第28号241~246(1996)

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