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果樹の植調剤利用

[2025.05.01]

●須崎静夫営農技術指導員●  

●はじめに

 ブドウの種なし化、温州ミカンの摘果、ナシやリンゴの落果防止など、いろんなところで、植物成長調整剤(植調剤)が活躍しています。植調剤には、植物ホルモンやそれに類似した活性や効果を示す有機物・無機物・天然抽出物、あるいは、発酵生成物などの複合物質も含まれます。

 一例を剤型省略でご紹介します。植物名の多くが、カタカナからひらがなに変わります。詳細は、植調剤 樹種名(いちじく・なし・ぶどう・みかん・もも・りんご・・)で検索・ググるか、各製品Webでご確認ください。植調剤は農薬に分類されます。使用基準を遵守して、使用履歴を記帳しましょう。植物ホルモンは、ごく微量でも作用します。

●植調剤いろいろ

●発芽促進:ぶどう/CX-10

 シアナミドによる休眠打破と窒素分による生育促進効果を期待します。発芽前の枝に散布・塗布します。昔は、石灰窒素の上澄み液を塗っていました。

●新梢伸長抑制による着粒増加:ぶどう/フラスター

 伸長を抑え、樹勢を安定化させて、花振るい(開花前落蕾)現象を抑え、その結果、結実が安定します。

●新梢伸長抑制による花芽形成促進:温州みかん・もも/バウンティ

 新梢の伸長、栄養生長を抑えることで、生殖生長への移行を促し、結果、花芽形成につながります。成分量の低い剤が、水稲の倒伏軽減や雑草の生育抑制にも利用されています。

●無核化・着粒安定:ぶどう/ジベレリン

 授粉・授精のような作用で、タネが入ったように勘違いさせているようです。品種の感応性の違いにより、時期・濃度が色々決められています。「デラウエア」での1回目処理は、開花約14日前処理なので、素人には何のことだか、分かりませんね。その日に相当する発芽後日数(約30日)とか、展葉枚数(10~12枚)とか、花穂の形(主穂と副穂の角度90度)・花蕾の隙間とか、顕微鏡で見る花粉の状態とか、曜日とか、当日の天候とかを参考に決めています。一斉処理なので生育・開花を揃えることがポイントです。「巨峰」「シャインマスカット」など、大粒系ブドウは満開のころから1・2回処理します。「デラウエア」同様、一斉処理する場合には、生育・開花を揃える必要があり、花穂のどこかに目印を付ける個別処理もできます。

●着粒安定:ぶどう/フルメット 

 ジベレリン処理のころ、混ぜたり、単用で使用したりします。品種間差や処理時期・濃度の登録範囲が大きいので、生産者の方は、色々と試行錯誤されています。

●摘果・着果安定:温州みかん/エスレル10+フィガロン(混合)・ターム

 エスレル10は、老化ホルモンといわれるエチレンを発生させます。フィガロンが果梗部の離層形成を促進して落果させます。タームは、NAAの復刻版で、名前を変えて再登録されました。オリーブの隔年交互結実で、成らさない年の摘果にも使用できます。

●果実肥大促進:キウイフルーツ/フルメット

 濃度が高いと、びっくりするくらい大きな果実になります。糖度が上がらず、貯蔵性も低下するような気がします。

●熟期促進:いちじく/エスレル10

 老化ホルモンであるエチレンによって成熟が進みます。これも使用時期が成熟予定15日前なので、ピンポイントで処理できるかどうか、よくわかりませんね。パイナップルの開花促進にも使用できます。

●落果防止:なし/ストッポール・ヒオモン、かんきつ/マデック

 離層形成を抑えることで、落果を防止します。品種特性による収穫前落果や成熟間際にやって来る台風の前に使用します。ナシ「瑞月:ずいげつ」は、収穫前落果が起こりやすいので、ヒオモンの使用が推奨されています。

●熟期促進:なし/ジベレリン

 果梗部に塗ると、熟期を促進させます。果実や葉っぱに着くとその部分が黒くなってしまいます。品種により効果が異なり、うまくいくと、「幸水」が盆前に成熟します。

●着色促進:ぶどう/アブサップ

 3月に適用拡大され、「巨峰」「ピオーネ」「安芸クイーン」「クイーンニーナ」「藤稔」などの「巨峰系4倍体品種」と「ポンタ」に登録されています。袋掛け後の着色始めのころ、袋を外して果房全体に散布するので、ちょっと面倒です。散布していない果粒には、着色が進みません。品種や栽培条件によっては、黒斑などの薬害の出るおそれがあります。

▲ひとふりで効果もいろいろ

●ちょろっと一言:植調の天使

 植調剤の働きをイラストにするのは、なかなか難しいですね。果物と担当者のイラストを描いてみました。空から散布しているのは、天使ズです。他作物への飛散等に十分ご注意願います。

▲植調剤で変身

   

▲植調天使ズ

●ちょろっと一言:登録前試験の思い出●

 とある試験番号のついた、とある薬剤を、とある果樹の根元に潅注しました。その結果、新梢が伸びずに、節間の詰まった、ちんちくりんな姿になりました。花芽はびっしりで、「これはいける」と思ったのか、「これは濃すぎる」と思ったのかは分かりませんが、翌年になっても、矮化効果は続き、「これは一大事」ということになりました。今では、1,000倍希釈程度の散布で、新梢伸長抑制で登録されています。まさか、「潅注量が多すぎた」なんてことはないでしょうね。

●ちょろっと一言:あったらいいな、魔法の薬●

 「糖度の上がる薬か、酸の下がる薬はありませんか?」本気なのか、冗談なのか、よくあるお問い合わせです。肥料担当者さんや農薬メーカーさんも、いろいろ売り込みが大変で、「これをやったら、こうなって、結果的には、糖度が上がりました、酸が下がりました・・・」という「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話は聞きます。直接的に効くような魔法の薬があったら、いいですね。ミカンを焼くと、甘くなるでしょうか。

●ちょろっと一言: 植調剤(要確認でお願いします)●

 ややこしや・・の世界です。略すと、植調剤ですが、元に戻すと、植は植物、調は調整・調節で2とおり、もう一つ成長と生長と生育とがあり3とおり、組合せは全部で6とおりの表現になります。学術的?には「植物生長調節剤」・・・で、農薬・植調協会的には、「植物成長調整剤」 だそうです。

●ちょろっと一言: 植調剤の残留基準●

 植物体にもともと存在している植物ホルモンならば、残留基準はあってないようなものでしょうか。合成ホルモンだといけませんね。

●ちょろっと一言: ブドウ品種「ポンタ」追記:大阪府立環境農林水産総合研究所Webから拝借です●

「ポンタ」は、大阪府の育成品種で、県外での栽培が禁止されています。Webを見ると、50年くらい前に育成されて、いったん育種が中止され、再び復活して、10年くらい前に品種登録されています。成熟すると、黄色いような薄紅色のような果皮色になります。着色促進の植調剤「アブサップ液剤」の適用作物に出てきました。「巨峰」に「ブロンクスシードレス」を掛け合わせたそうなので、「巨峰系品種」かな、とも思いますが、ブロンクスシードレスが3倍体?なので、4倍体では、ないのかもしれませんね。さて、何倍体になるのでしょうか。

品種名「ポンタ:Ponta」の由来は「popular」「ice taste」で、商品名には、種なしを意味する「シードレス」が付きます。「ブロンクスシードレス」は、シードレスなので、3倍体?で、3倍体に花粉があるのかと検索したら、2倍体、4倍体ほどではないけれども30%くらいはあるそうで、リンゴの3倍体には花粉がないらしいので、授粉樹には向きませんとあるので、またまた、話がややこしくなりますね。

 

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