
果樹の鳥獣害対策
[2025.04.01]
●はじめに
鳥獣保護管理法が大原則で、農林水産業の鳥獣被害防止に対しては特別措置法(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律)により計画的な駆除・管理を行うことができます。アライグマ、ヌートリアなど特定外来生物には外来生物法があります。
●鳥獣害対策の基本
環境整備・追い払い・個体数管理といわれています。果樹園・畑・里山・民家などとの境にある雑木を伐採して、隠れ場所をなくし、野菜や果物、残渣が恰好の餌とならないように処分したり、看板を立てて、近づかないようにしたりします(図1)。鳥獣類を見つけしだい追い払いましょう。それでも被害が減らないときは、地域で話し合い、奴らの生態をよく観察して合法的に減らします。
▲図1 立入禁止の看板
●被害の現状
当地域でも、全域でカラス、スズメなどの鳥類やアナグマ、アライグマ、タヌキ、ヌートリア、ハクビシンなどの中小害獣類の、山の方ではイノシシ、サル、シカなど大害獣類の被害が増えてきました。他にも、クマやカモシカ、頭の黒いサルがいるかもしれません。
●侵入防止・追い払い
侵入防止に、防護柵・電柵・フェンス・ネット(網)がいろいろ考案され、対象獣に対して、高さや網目の大きさが工夫されています。電柵は、獣が触れると、微電流が流れるような仕組みになっています。人が触れないように注意看板を立て、漏電防止のために草刈りする必要があります。
ネットには、「触れたらビリッとくる」物理的・電気的な侵入防止だけでなく、「落っこちそう」とか「脚が絡まるやん!」みたいな心理的にも侵入させない資材も考案されています。
いずれも、柵やネットが道路で寸断されると、そこから自由に出入りできてしまうので、グレーチング(金属製桝蓋)を置いて、イノシシやシカの足が竦んで入れないようにしています。
追い払いには、人間が騒ぐのが一番です。おもちゃの鉄砲・BB弾とか空気銃、花火、番犬なども使われます。他にも、案山子とかトラのぬいぐるみ、風船・バルーンも流行りました。ヒトデ粉末などの忌避資材も販売されています。
鳥よけには、派手な爆音機がありましたが、近所迷惑もあってか、ご無沙汰しています。ときどき、超音波とか鳥の悲鳴とかCD盤とかカラス・ヘビの死んだふりの現物とか、鷲:ワシ・鷹:タカ型の凧・カイトとか、果ては、本物も連れて来られますね。現実的には、果樹まわりに網を広げたり、テグス(釣糸)・木綿糸・絹糸・キラキラのテープを張ったり、本格的には、園地全体に、杭・ポールを立てて1~2mおきに、針金、黒いピアノ線を張り巡らせたりすると、上からの侵入をある程度防ぐことができます。横からの侵入を防ごうとすると、人間や機械も入りにくくなります(図2)。
▲図2 おどろかし資材
●捕獲
害獣捕獲のための罠・檻を設置するためには、各市町村が、「今いる害獣数をこのくらいにまで減らしたい」「そのためには、こういった対策を立てます」といった鳥獣被害防止管理計画を立てます。この計画に基づいて、罠や檻の設置前には、食害状況や足跡で獣種を特定し、野生鳥獣観察用の「アニマルセンサー」や自動撮影装置「トレイルカメラ」で生態を観察します。設置後には、目的の鳥獣を捕獲したら速やかに処分すること、目的以外の鳥獣を捕獲したら速やかに逃がすこと(放出)などが求められます。特定外来生物であるアライグマ・ヌートリアに対しては、外来生物法に基づき、捕獲後の放出・移動・飼育が禁止されています。
カラスは捕獲しても、またどこかからやって来てしまいます。黄色は見えるみたいです。巣を取り除くと仕返しされます。緑のレーザーを嫌うようなことも書かれていましたね。
イノシシは、子ども(ウリ坊)だけを捕まえても、また子どもを産んでしまいます。死亡イノシシを見つけたら「豚熱陽性」の疑いもあるので、必ず市町村へ報告してください。
●ちょろっと一言●
カピバラはお風呂に入って可愛いのに、ヌートリアは尻尾のせいか、あまり好かれませんね。レッサーパンダの「風太君」は、最近、あまりお見掛けしませんが、アライグマは、ちょっと怖そうです。クマの「プーさん」も、絵本の中では可愛いけれども、一緒に暮らすわけにはいきませんね。
●ちょろっと一言●
最近(2024年6月から)本物のタカが活躍しています。楽観的に考えると、タカが来るとカラスやムクドリがいなくなりますが、悲観的に考えると、逃げて行った所で悪さをするみたいです。管外や県外へ逃げてくれるのが一番ですが、長閑な雑木林の残る当地では、なかなか計画どおりにはまいりませんね。
●ちょろっと一言:よくわかりませんが、愛知県の場合でまとめていただきました●
クマ・サルを含めた野生動物は、鳥獣保護管理法で、増えすぎた場合に、捕獲、飼育が可能です。イノシシ、カラス、サル、シカ、タヌキ、ハクビシンを含めた野生動物は鳥獣保護管理法で、捕獲、飼育が可能で、鳥獣被害防止特別措置法でも捕獲・処分が可能です。アライグマ・ヌートリアは、外来生物法で駆除(殺処分)しかできません。ニホンカモシカは、地域指定の天然記念物ですが、愛知県では指定されていないので、捕獲・駆除が許可されています。
●ちょろっと一言:外来生物●
近所でよく目にするのは、アメリカザリガニとか、ウシガエル、ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)でしょうか。アメリカザリガニを久しぶりに見たときは、何か、一回り大きくなっているような気がしました。5月になれば、オオキンケイギクもそこらじゅうで花を咲かせています。セイダカアワダチソウは、すっかり、秋の風物詩になってしまいました。コスモスのように、可憐でもあまり野生化していないと目の敵にされないのに、繁殖力が強いのも考えものですね。
●ちょろっと一言:外来生物②●
ハラビロカマキリやゴマダラカミキリの大きいのとかも、侵入してきました。モモの枝幹害虫「クビアカツヤカミキリ」も、飛んできました。その一方で、アメリカシロヒトリとか、アオマツムシは、あまり見かけなくなりました。
●ちょろっと一言:外来生物②●
報道では、奄美大島のマングース(フイリマングース)が完全駆除されました。ハブをやっつけるために導入されたのに、ウサギ(アマミノクロウサギ)やトリ(ヤンバルクイナ)など、他の貴重な動物を(も)襲ってしまうとかで、人間の都合で、益獣にさせらりたり、害獣にさせらりたり、こういうのを、「踏んだり蹴ったり」、改め、「踏まれたり蹴られたり」というのでしょうか。
●ちょろっと一言:カラスさん●
昔、ギャーギャー騒ぐ、ちょっと色黒の「カラスさん」という後輩がいました。ちょろっとうるさくて黒いから、そう呼ばれていたわけではなく、どんな植物もすぐに枯らしてしまうからということを、しばらくして知りました。