
気象災害対策 冬春編
[2024.11.01]
●須崎静夫営農技術指導員●
●はじめに
異常気象で毎年のように百年に一度の災害が起こっています。自然の猛威には勝てません、できることを着実に行いましょう。対策は、何をいまさらの適地適作、被害を受けにくい品種の選択、気象災害に負けない樹づくり・土づくりです。いつもより発芽・開花が早いと晩霜に、成熟が遅いと秋冬の降霜にあいやすくなります。
●寒害
樹種、品種、生育状況によって耐寒性が異なります。イチジクを除く落葉果樹は、休眠期間中なら一時的にマイナス5℃くらいまでなら問題ありません。
寒さに弱いイチジクでは、落葉後の厳寒期から発芽するまで、わらや新聞紙などで、主幹や主枝部分など、枯らしたくない部分を保護しましょう(図1)。少し寒さに弱いカンキツ類は、寒冷紗やタイベックなどで樹全体を被覆します(図2)。
密閉しすぎると、反対に高温障害の危険があります。果実が成っている場合は、ちょっと早めに収穫したり、果実に袋やネット(商品名例:サンテ)を被せたりします。
イチジク・カンキツ類など、寒さに弱い樹種の剪定は、3月下旬以降の寒さの緩んだ頃に行います。冬に剪定すると、その後の寒さで、樹冠や切口が寒害にあうことがあります。雑草の発生を防ぐために、敷きわらもあまり早く行うと、晩霜被害を助長します。鉢植え果樹なら、冬の期間中は、陽の当たる屋内に取り込んでもいいでしょう。あまり暖かいと、芽が動き始めてしまいます。
●霜害・凍害
晴天で、前日の最高気温が15℃以下、日の出前の最低気温が5℃以下、風の無い時や雨の2日後に、地形によっても園地の中央部や風の通らない垣根の近くなどに、霜が降りやすいとされています。防風垣は、冷気が溜まらないように株元50㎝くらいを透かしておきましょう。
ウメ・カキ・キウイフルーツ・ナシ・モモなど多くは、発芽・開花・幼果期に被害にあうと1年の生育に影響します。イチジクで生育が遅れる程度なら、収量は何とか確保できるかもしれません。
霜・低温注意報は、前日の午後5時頃に発表されています。この地域の最低気温は、名古屋(地方気象台)とほぼ同じです。空模様、ニュース、天気予報、Webなどでも確認してください。
初霜の平年日は11月下旬頃(11/30)、終霜は3月下旬(3/21)頃で、「八十八夜の別れ霜」なんて言葉もあります。
燻煙は、煙で樹体部分の気温を上げます。昔は、廃油や古タイヤを燻していました。専用の燻煙剤やモミガラを、火が着かないように細工して煙を出します(図3)。近所迷惑のない所ならできなくもない技でしょうが、今は環境問題もあって、善良な住民に通報されるかもしれません。
送風は、あらかじめ設置した防霜ファンで地表面よりも気温の高い空気を送ります(図4)。リンゴ園や茶園などの霜害常襲地にみられる方式です。この辺では、あまり現実的ではありません。
散水は、灌水パイプで地表面や植物体に水をまきます。地下水なら10℃以上あります。気温や面積と相談して、SSで走行しながら散水しても良いでしょう(図3)。新芽や蕾・幼果に散水して、水が氷になる時の潜熱を利用します。開花期の凍害にあう限界気温は、約マイナス2℃です。
事後対策では、被害が酷い場合は、今年の収穫を諦めて、樹形改造の機会と捉えましょう。
着果・収穫が見込める場合は、人工授粉、葉面散布など、着果確保、樹勢回復に努めます。
●雪害
湿った雪で、老木や樹勢の弱った樹・棚や天井に広げた防鳥・防風網が倒壊することがあります。枯木・老木は早めに改植してください。防鳥網などは、収穫後、速やかに回収・巻き上げます。雪の深さは情けの深さとか、積雪量が多くて、除雪隊を出動させると、除霊隊と勘違いされて、ありがたがられるかもしれませんね、合掌。
秋編はR7年3月の予定です。
▲図1 ▲寒さ対策:イチジク・わら巻き
▲図2 寒さ対策:㊧カンキツ・ネット被覆 ㊨カンキツ・サンテ掛け
▲図3 燻煙:専用資材は〇か△? 古タイヤは× SS散水
▲図4 防霜ファン
●ちょろっと一言: 雪で棚が倒れました●
雪がめったに降らないところで、雪が降ると大変なことが起こります。防鳥網を張りっぱなしだと、果樹棚が倒れ、柱がぐにゃりです。「収穫終わったら、即、網回収」が鉄則です。
●ちょろっと一言:雨女・雪男
世に、晴女・雨女は、数多みえますが、たまに、雪男さんとか晴男さんも表札で見つかりますね。