
農薬の適正使用①
[2026.02.16]
●営農技術指導員 須崎静夫●
2002年に農薬取締法が大幅に改正され、家庭果樹でも規制されています。病害虫の発生しにくい環境づくりや農薬を使わない防除に心がけ、園地をよく観察してください。まずは、農薬に頼らない方法を考えましょう。現在では、総合的病害虫・雑草管理(IPM)という、経済的には損失のない程度までは病害虫や雑草の発生を許容するという考え方が主流です。
農薬を使用する場合には、病害虫防除こよみを参考にしながら、病害は予防に、害虫は早期発見・早期防除に努めましょう。当JAでは、家庭果樹栽培者向けに、イチジク・ウメ・カキ・カンキツ・キウイフルーツ・クリ・ブドウ・ナシ・モモ・リンゴの防除こよみがあります。最新版をご利用ください。
●農薬に頼らない方法
いわゆる耕種的・物理的防除になります。日当たり、風通しの良いところで栽培します。排水性・保水性、バランスの良い成分、有用微生物などの理化学性・生物性を兼ね備えた土壌環境を目指します。
適地適作に努め、抵抗性台木・品種を利用します。植え付け時には、健全な苗木・穂木を利用しましょう。樹勢・着果量を適切に保ち、生育に合わせた施肥に努めましょう。
防虫網・防風網・防風垣を整備しましょう。落葉・枯枝・病害虫被害部の除去や園地内外・周辺の環境整備に努めましょう。病虫害被害を避けるために、敷きわら・マルチ・袋掛け・カサ掛けや雨よけ栽培を行いましょう。
改植する時には、根っこなど残渣を丁寧に取り除きましょう。イチジク・モモは、植え付け場所をずらしたり、土壌消毒したりするなど、できるだけ改植障害を回避しましょう。
●防除こよみの作成
防除こよみがなければ、よく似た環境条件の先進地を参考にさせていただきます。こよみがあれば、これまでの実績を参考に、経済性・効果(感受性低下)・薬害・軽作業化・環境保全などを配慮します。農薬の新規登録・登録抹消・在庫不足とか、ミツバチ・天敵への影響が少ないとかも理由になります。希釈倍率が高くなると、容器が小さくなって、業者・栽培者さんにも好評です。
農薬登録の使用基準には、適用作物、対象病害虫・雑草、使用(希釈)濃度、散布・灌注・塗布などの使用方法、使用時期(収穫前日数)、使用回数・同一成分を含む総使用回数などが決められており、遵守することとされています。また、農薬には作用機作に応じてRACコード(殺菌剤:F-RAC・殺虫剤:I-RAC・除草剤:H-RAC)が割り振られています。
こよみの作成においては、これらを念頭に、果樹の生育時期・病害虫の発生時期別に農薬を割り当てていきます。病害虫の発生する時期は、ほぼ決まっています。使用間隔は、農薬の残効期間となりますが、成長期や多雨期には約1週間、成長停止・停滞期や少雨期には約2週間で、予防剤とか収穫前日数の長い剤を前に、治療剤とか収穫前日数の短い剤を後ろに置きます。また、同じRACコードが続かないように注意します。基本的には、殺菌剤と殺虫剤を混用して使用します。効果の高い農薬が基幹防除で、多発時に行なうのが臨機防除と呼ばれています。除草剤や展着剤も農薬の特性や使用目的に合わせて選択します。
家庭果樹用こよみでは、毒性の低い普通物の農薬を採用しています。
●農薬使用に向けての注意点
自園地や周りの園地をよく観察しましょう。国や県が配信する病害虫発生予察情報にも注意してください。
農薬を使用する場合には使用基準を遵守し、使用したら履歴を記帳しましょう。農薬の飛散に注意し、周りを囲うような飛散防止策を講じたり、風の強い時は使用を控えたりしましょう。農薬使用の前後には、周辺周知、情報提供に努めましょう。
使用済み容器・包装や不要農薬を適正に処理しましょう。農薬容器には転倒防止策を講じ、鍵の掛かるところに保管しましょう。
体調の優れない時は、使用を中止しましょう。使用者の安全を保つため、保護クリームを塗り、防水・不透水性の防除衣・メガネ・マスク・手袋・長靴などを着用しましょう。
家庭果樹では、毒劇物農薬の使用は避け、毒性の低い普通物を使用して下さい。誤飲を防ぐためにも、ペットボトルなど他の容器への詰め替えは絶対に行わないでください。
▲農薬散布前の準備:防水・不透水性の防除衣・メガネ・マスク・手袋・長靴を着用してください。保護クリームも忘れずに。
このイラストは着せ替え人形方式です。胴体と顔をくっつけてください。
●ちょろっと一言:しましょう・ましょうの人々●
しましょう・ましょう・しましょう・ましょう、と入力していると、ひょんな時に、「魔性」に変換されてしまいますね。

▲魔性の蟷螂
●ちょろっと一言: 農薬の再評価制度●
2018年にも、農薬取締法が改正され、農薬の再評価制度が始まりました。約15年おきに使用量の多い成分、毒性の懸念がある成分を優先して、農林水産省が農薬を指名し、農薬メーカーが必要なデータを作成します。作成しないか・できないと、登録変更や抹消・販売終了となります。
●ちょろっと一言: 最近の農薬登録●
最近まで、果樹の農薬登録は、落葉果樹と常緑果樹に分けられるものと思っていましたが、いつのまにやら、この分類がなくなりました。ブルーベリーやブラックベリーは、葉っぱすべてが落ちないこともあり、どんぐりの仲間にも、春にならないと、葉っぱ(旧葉)の落ちない樹があります。パパイヤも、以前は成熟果実が果物、未成熟の青パパイヤが野菜での登録でしたが、実態に合わせたのか、どちらも果物での登録に変わっています。
▲「ブルーベリー」「ブラックベリー」:私たちは、なかなか落とせませんよ~
▲「成熟パパイヤ:左」&「未成熟パパイヤ:右」:私はどっちでしょう
●ちょろっと一言: 最近の農薬登録●
トウモロコシの農薬登録は、ちょろっとややこしいですね。普通に食べてる「スイートコーン」は、分類上では「未成熟とうもろこし」になり、「ヤングコーン」を食べたり、販売しようとしたりすると、いつもの「デナポン粒剤5」はお勧めできずに、「フェニックス顆粒水和剤」をお勧めしています。しかし、モモのコスカシバを200倍で樹幹散布しようとすると、(農薬登録上は)「フェニックス顆粒水和剤」が使用できずに、「フェニックスフロアブル」しか使用できません(R7年9月現在)。
●ちょろっと一言:「防除こよみ」クリエーターvsパ・クリエーター●
20年くらい前までは、病害虫や農薬に詳しいクリエーター様が、毎年、せっせと仕事の一環として、「○県防除こよみ」なるものを作成されていましたが、今では産地ごとのお任せになりました。地域によっては、農薬(特に殺ダニ剤)の感受性(抵抗性)程度が異なったり、農薬販売の系統vs商系の勢力・価格競争があったりとか、「何でうちの農薬が入ってないの」という正当なクレームとか、その他もろもろの理由がありそうですね。このとばっちりで、あまり詳しくない人が、ない知恵を絞って、というか先進産地を参考にして、各産地「防除こよみ」をパ・クリエイトしています。同じRACコードを並べないようにするだけでも一苦労です。
▲「リンリン」&「クルクル」:殺虫剤の一卵性双子です。中身は一緒なのに、お値段がかなり違います。本当の名前は「アルバリン」&「スタークル」でしょうか。
●ちょろっと一言: GAPシートの想い出●
GAPのことがまだ良くわからないころの、5月のイチジク講習会「アザミウマ類防除」での笑い話です。
「あれこれ、自分でチェックして、『GAPシート』に記載してください。・・・(途中省略)・・シートは後ほどお配りします。何がご質問はございませんか。」と、その時、参加者の方から質問が出され、
Q:「そのシートは、いつごろ、どこに敷いたらいいのでしょうか。」
A:「果実が大きくなる前の、5月中旬には、イチジクの株元へ敷いてください。」と、いつの間にか、アザミウマ類忌避のためのマルチシートに変身していました。

































































