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8月の果樹だより

[2018.08.01]

●杉山文一営農技術指導員

<カキ栽培のポイント>

1 カキの特徴

① 結果習性は結果母性で、隔年結果が強く現れる。

② 高木性で樹が大きくなり、頂部優勢性で、先端の芽から発育する新梢が強く伸長する。

③ 陰芽は強く切り返すと伸長を始め、樹勢回復が容易な作目です。

④ あまり土壌を選びませんし、湿害に強い樹種でが、直根性ですので、移植は樹勢を弱めます。一度、樹勢を弱めると回復が困難です。

2 結果習性

カキの結果習性は結果母枝性で、図1の様に今年発生した新梢が結果母枝となり、頂芽および2~3の腋芽に花芽が着生し着果します。新梢の先端を切り戻すと、新梢が伸びて着果しません。切り戻しは、枝を伸ばそうとする主枝、亜主枝の先端部分以外はおこないません。また、着果過多や結果母枝が弱いと翌年の新梢は着果は少ない。

3 主要品種の特性

主要品種である早秋、甘秋、太秋、富有の特性は、表1のとおりです。

4 果実の肥大

果実の大きさは、萌芽から開花約1か月後までに決まる。幼果の細胞数の多少によるところが大きい。

果実肥大は、図2の様に、第1期肥大期は、細胞分裂によって肥大し、第3期肥大期で一つ一つの細胞が大きなって果実が大きくなる。

5 摘蕾作業

(1)目 的

発芽から開花期までの生育は、貯蔵養分によってまかなわれます。摘蕾は貯蔵養分の浪費を防ぎ、花芽の分化と充実を促進し、大玉果実生産や隔年結果防止などの効果が大きく、高品質安定生産のための、重要な作業です。

(2)時 期

開花前15~20日頃に行ないます。早めに行う方が効果は高い。しかし、今年は開花時期が昨年より早いので、実施する場合は早目に行う。

(3)程 度

① カキは着果が良いので、1結果枝当たり1蕾が基本で摘蕾する。

② 強い結果枝では2蕾残す。

③ 結果枝の長さが10cm以下や5葉以下の弱い枝は全て摘蕾する。

(4)方 法

結果枝の中央部にあり、次のような蕾を残します(図19)。

① 大きくて形の良い蕾

② ヘタの大きな四つ揃った蕾

③ 果梗が太く緑の濃い蕾

④ 横向きや斜め下向きの蕾

⑤ 枝や果実同士がすれない蕾(外向きの蕾)

*奇形の蕾や主枝、亜主枝の先端など伸ばしたい結果枝は全て摘蕾する。

(5)摘蕾の効果

カキは他の果樹に比べて開花後花芽分化までの期間が短く、摘果の時期に非常に近い。5月下旬の開花中下旬には翌年のための花芽分化がおこなわれる。通常行われている摘果は7月上中旬であり、新梢に与える消耗はかなりあると思われる。摘蕾で着果数を制限することは、花芽の充実につながり隔年結果の防止となる。

6 摘果作業

(1) 摘果の目的

美味しくて、大きい果実をつくるには、摘果をして着果数を減らすことが重要です。

摘果の効果は、①隔年結果の防止(花芽分化の促進)、②果実肥大の促進、③果実品質の向上、④省力化と作業効率の向上です

(2) 時 期

生理落果(6月中下旬)が終わった7月上旬になったら始めますが、7月中におこなうと効果が高く大きい果実が生産されます。生理落果の少ない樹から始め、生理落果の多い伊豆や次郎などは後にします。樹勢の弱い樹や着果数の多い樹では早めにおこなう。

(3) 程 度

「富有」における最終着果数の基準は、葉果比20枚程度であり、表2を目安に実施して下さい。「富有」や「松本早生富有」では長さ20cmの結果母枝1本当り1果が良い。

(4) 方 法

摘果する果実は、①小玉果、②変形果、③奇形果、④傷害果、⑤スレ果、⑥病害虫被害果、⑦上向き果(日焼け果)、⑧遅れ花の果実、⑨ヘタ片傷害果でヘタ片が4枚無い果実です。

残す果実、①形が良くて大きい、②ヘタが4枚とも大きくてしっかりしている、③果頂部が盛り上がって丸く整った果実です。

(5)  品種別の注意点

① 急激に肥大すると、富有はヘタすきが次郎や太秋は果頂裂果が発生するので早期摘果や過剰摘果に注意する。

② 早秋は、突起やスジのある奇形果が多いという欠点があるため、果実を確認しながら良いものを残す。

早秋は、下記の様な奇形果が発生しやすいので摘果の時に注意する。

7 ヘタと果実の肥大

カキは、ヘタが果実の肥大に重要な役割を果たします。図6の様にヘタが4枚正常な果実を残す。

8 整枝せん定

 (1)基本的な切り方

枝を途中で切る「切り返しせん定」と枝の発生部や分岐部からすべてを切り取る「間引きせん定」があります。

 ア 切り返しせん定は、次の場合におこなう。

① 先端部を強く切り返し、強い新梢を伸ばして骨格となる枝を育てる。

② 結果枝や側枝の先端を弱らせないため、先端を軽く切り返す。

③ 切り戻して、先端が垂れた枝の勢力を回復を図る。

 イ 間引きせん定は、次の場合におこなう。

① 混み合った枝や重なりあった枝を除く。

② 残したい枝と太さが競合する太さの枝を除く。

*切り返しせん定に比べて残した枝の勢いが落ち着き、結果)枝や花芽が着きやすくなる。

(2)生育や樹形を乱す枝と整枝・せん定の対象の枝

①平行枝、②三又枝、③車枝、④内向枝、⑤逆行枝、⑥下垂枝、⑦徒長枝は樹形を乱す枝である。

(3)整枝せん定

ア せん定時期は、樹の生理を考えると12~2月上旬にかけておこなう。

*落葉したら始めて、萌芽が遅いので2月下旬までに終わる。

イ 整枝せん定は、①縮間伐の実施、②骨格(主枝・亜主枝)の確認、③太枝のせん去、④古い(長大化した)側枝のせん去、⑤主枝先端部から基部へせん定の順でおこなう。

ウ 整枝、図8のように主枝が2~3本の開心自然形に仕立てると良い。各主枝に亜

主枝として横枝を、各主枝から2本~3本の亜主枝を横枝でつくり、そして、亜主枝         から果実をならせる部分の側枝をつくる。

エ 幼木期から生育が旺盛な場合には、枝の発生角度が狭くなりやすいため、植え付けたあと早期から枝に支柱を添え、枝の角度を広くする誘引をおこなう。

また、主枝や亜主枝の先端を切り返す場合は、外芽のところか、外側へ出た徒長枝のところで切り返えして、先端部分が開くようにする。

オ 全体の樹形は、図9のように二等辺三角形になるようにします。上部の枝が大きくなったら、新しい枝のあるところで切り返す。

カ 側枝(結果部位)の作り方

側枝(結果部位)は、図10のように①果実を生らす結果母枝と②徒長枝を1/3程度強く切り返して翌年新梢を発生させる部分を作り、結果部位を形成させます。

側枝は数年経ったら、更新をおこなう。側枝を若返らせることにより、良果生産が継続される。

 

キ 主枝・亜主枝の先端の切り返しの程度は、新梢の強さによって切り返しの程度を変える。

   ① 適度なものは先端3分の1程度

② 強いものは先端5分の1程度で弱く

③ 弱いものは先端2分の1程度で強く

ク 強い枝ほど発生する新梢数が多く、勢力も強い。強い結果母枝を残すと、良品果実が生産できる。強い結果枝に着果した果実は肥大が良い。徒長枝は予備枝として利用する以外は切除するが、せん定で長くて強い結果母枝は残し、強い結果母枝で揃えるようにする。

ケ 主枝の発生角度が広いほど生理落果は少なく、主枝の角度が狭いほど生理落果は多くなる。主枝の発生角度と生理落果率との間には高い相関関係がある。

(4) せん定量

夏季せん定をおこなっている樹は、ある程度骨格が適正になっていると思います。夏季せん定をおこなっている樹は、20%以内のせん定量のせん定となると思いますが、側枝の更新や太枝の間引きや切り返しを行う場合は、30%以内のせん定量にしてください。それ以上だと、強せん定となり強い新梢が発生し、隔年結果の原因となる

9 新梢管理作業について

① 太い枝を除去した部分から発生した新梢は、主枝や亜主枝の背面から突発枝は早めにかき取るか切除する。

② はげ上がっている部分から発生している新梢は、6月上中旬に念枝や45度に誘引しておくと翌年の結果母枝や側枝となる。

③ 強くなりそうな枝や、込み合っている部分の枝は、通風や採光を良くするため6月下旬~7月に掛けて除去するが、横向きで側枝として使える新梢は残す。

④ 二次伸長した枝は、二次伸長した部分を摘芯をする。

10 施肥管理

1年間の施用例を表3に示しましたので参考としてください。10a当たりの成木の施肥量ですので、植栽面積と樹齢に合わせて調整してください。基肥は、有機配合肥料か粒状固形肥料を追肥は化成肥料を使用してください。なお、追肥は生理落果が終わってから、礼肥は着色が始まったら施用する。

 

 

11 土壌改良

① カキは高木性の果樹で、普通の栽培では当然根も深く伸びているが、とくに、土中の不易層(気温が変化しても一定の地温<15℃>を保っている場所)に多く分布している。これは、根には葉のような蒸散による体温抑制機能がないので、地温の変化のない場所にのびていくことで環境の変化に対応していると考えられる。

② 冬季の土壌改良によって保水性、排水性を高め、土を膨軟にすることは、春の乾燥害や夏の干害や高温障害を防ぐうえでも重要である。

12 主要病害虫防除

次の病害虫が多く発生します。防除こよみを参考に防除に努めて下さい。

① 落葉病

ア 発生部位と症状

(ア) 円星落葉病

近年、発生が多くなっている。天候の影響もあると思われるが、放任樹が増えていることと、高齢化とともに適期防除ができないことが原因の一つ思われる。図のような生活史で、落葉病斑内部で菌糸や菌糸の塊で越冬する。葉に小さな丸い黒点ができ、その後6~7mmに拡大し中央は赤褐色で周囲が黒褐色の病斑になり落葉する。

(イ) 角斑葉病

円星落葉病より被害の程度は軽いが、多発生すると樹上での果実軟化が進行する。主要感染時期は、5月下旬~6月下旬で、1~2ヶ月の潜伏期を経て発病する。

葉の周囲が黒色の多角形または不整形の褐色病斑を形成して落葉する。

  イ 防除方法

(薬剤散布)

時期:5月下旬・6月上旬・7月上旬

(耕種的防除)

・落葉した葉は、園外へ除去して園内を綺麗にする。

・肥培管理や土壌管 理に心掛け、樹勢を健全にたもつ。

・排水を良好にする。

② カキミガ(ヘタムシ)

ア 発生部位と症状

・幼虫は、着果枝の先端に近い芽を食害し、のち果実に食入する。

・果実への食入は、果鞭、ヘタの部分から行われ、虫糞を多量に押し出す。

・6月上中旬と7月中下旬に発生する。

イ 防除方法

(薬剤散布)

時期:6月上旬から7月上旬

(耕種的防除)

・バンド誘殺や租皮削りは、防除効果が高い。

・被害果実や租皮削りくずは、園外へ除去して処分する。

③ カメムシ類

ア 発生部位と症状

・吸われた跡は、丸い水浸状の斑点になり、くぼんで黒く変色する。

・被害は9月上中旬に多いく、被害斑点はヘタの周辺に集中している。

・ヒノキの球果が多いと、発生が多くなる。

イ 防除方法

(薬剤散布)

時期:8月下旬から9月中旬

(耕種的防除)

・予察灯で、誘殺する。

④ フジナカイガラムシ

ア 発生部位と症状

・被害は主に果実に発生し、白色のワラジ型で果実のヘタ下に寄生してスス病を併発する。

・第1世代の幼虫発生期は、6月上旬である。

イ 防除方法

(薬剤散布)

時期:5月下旬から6月上旬

(耕種的防除)

・11月までにバンドを樹幹部に設置し、3月下旬までに外して焼き捨てる。

⑤ カキクダアザミウマ

ア 発生部位と症状

・若葉の葉数を加害して内側へ巻き込み、果実はリング状の傷をつける。

・年1回の発生で、5月中旬頃から幼虫が現れ、6月上旬頃から幼虫が出現して幼果を加害する。

イ 防除方法

(薬剤散布)

時期:5月下旬から6月上旬

(耕種的防除)

・被害葉や被害果は、園外へ除去する。

・冬期に粗皮削りをおこなう。

13 生理傷害

(1) 汚損果

ア 症状の特徴           

① 破線状汚損果は、果頂部から果底部にかけて無数の破線の亀裂が入り黒変する。

② 雲形状汚損果は、果頂部から赤道部にかけて不整形のうす墨を塗ったように黒変する。

③ 黒点状汚損果は、果頂部から赤道部付近に多く発生し、直径1~3mmの円形状の黒点が散在または集合する。

  イ 発生時期

破線状と雲形状の汚損は着色初期から、黒点状の汚損は落花後から発生し始める。

品種では、「伊豆」や「新秋」「太秋」等で発生しやすい。

ウ 発生原因

汚損果の発生は、果実に水滴が付着する時間が長いほど著しいので、果実に太陽光が十分当たるよう誘引等を行い、結露時間を短くするよう工夫する。また、9月以降の銅剤や有機リン剤を散布すると発生しやすい。

  エ 対 策

亀裂の発生防止策としては、排水をよくし、チッ素の遅効き避ける。汚染誘発物質の付着防止のため、9月以降の銅剤や有機リン剤の散布を控える。また、果面のぬれ防止のため、通風のよい樹園地にする。また、9月上旬に袋をかけると

(2) マンガン欠乏症 

ア 症状の特徴

新梢の基部の葉に、5月初めころから葉脈の末端に黒変してできた斑点が現れ、続いて中そくと主脈部分を残して葉脈間が黄化し、しだいに新梢先端に進行する。

イ 発生しやすい条件と場所

土壌のpHがアルカリ化してくると、土 壌中のマンガンが不溶性になって欠乏症を生ずる。また、園地が過湿状態だと根の活力が低下し、マンガンの吸収が減少して欠乏症が発生する。

ウ 対 策

pHの改善を図ると共に、硫酸マンガンなどのマンガン肥料を施用する。また、排水をよくし有機物を施用して土壌の物理性の改善を図る。

(3)生理障害

ア 果頂裂果

症状は、9月中下旬から収穫期に かけて果頂部の縫合線に沿って亀裂を生じるが、種子数の多いほど発生し、無核果実の方が発生が少ない。次郎や太秋に多く発生する。急激な果実肥大が影響すると思われる。

イ 果頂軟果

症状は、果頂部が濃くなると果頂部が軟化する。発生しやすい品種は、富有が、 

発生しやすい。(今年樹上での軟化が多いのは、天候の影響があると思われます。)

ウ ヘタスキ

ヘタと果実の接合部に亀裂を生じる症状です。近年、天候の影響でヘタスキの発生が多いように思われます。ヘタスキから、炭そ病を誘発しています。後期落果が多いのは、ヘタスキによる傷が原因と思われます。富有、御所系品種と次郎で、若木の果実や大果で多い。

原因は、ヘタは7月中下旬ころになると発達・肥大を停止し、ヘタと果実の接合部の大きさで決まる。しかし、果実はその後も肥大を続けており、9月以降基部の肥大生長に入るため、ヘタと果実の肥大にひずみが生じヘタスキの発生が多くなる。

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