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8月の果樹だより

[2020.08.01]

●営農技術指導員 杉山文一●
<柑橘類の着果管理と硬核類・カキの新梢管理とブドウ・ナシの収穫適期>

1 柑橘類の着果管理
 今年の柑橘類の生育状況は、満開が5月7日頃と平年並の状況です。温州みかんや中晩柑類ともに隔年結果の樹が見られますが、全体に開花状況は良く、着果も良いと思われます。樹は全体に落ち着いていますが、新梢の伸びは良いと思います。生理落果の時期となりますが、果実も肥大してきます。隔年結果を防ぐには着果量に注意し、消費者ニーズに合った大きさの良品果実の生産に努めてください。

(1)結果習性
 柑橘類の結果習性は、図1のとおりです。①結果母枝は、今年果実を着ける結果枝を発生させる枝です。②予備枝は、 今年は花を着けず、発育枝だけを発生させる枝です。

ア 隔年結果性
 柑橘は、成り年(表年)の翌年は不成り年(裏年)になる隔年結果を起こす性質が強い。成り年には適量の2~3倍も着果することがある。そのままにしておくと果実が小さくなるだけでなく、樹体養分の消耗が大きく、隔年結果を助長する原因となる。
<ミカンの枝は隔年結果をおこす>
① 前年に果実がなった結果枝は果梗枝と呼ばれ、この枝から今年花をつける結果枝が出ることは少ない。
② 前年に果実がならなかった発育枝からは、今年花をつける結果枝が出やすく、前年の発育枝を結果母枝と呼んでいる。
③ ミカンの緑枝1本1本は完全に隔年結果している。

イ 花芽分化期
花芽分化期:生理的にみて9月から11月上旬までと、2月から3月にかけての時期花芽分化への影響。2月から3月は影響が少し弱く、9月から10月ごろが最も影響しやすい。
結果樹:10月以降3月初めごろまで花芽の形成に強く影響する。
未結果樹:12月以降の花芽の形成への影響は弱い。

(2)柑橘類の隔年結果防止
柑橘類は、成り年の翌年は不成り年になる隔年結果性が強い果樹です。隔年結果を防ぎ、高品質果実を連年生産するためには、摘果や新梢管理(予備枝の確保)など、着果量と結果枝や発育枝の割合を調整する必要があります。
着果量が多いと翌年着果不良となり、隔年結果します。

【花芽分化期と着果量減少について考えられる要因】
花芽分化への影響は、9月から10月ごろが最も影響しやすく、2から3月は影響が少し弱くなる。
*着果量が少ない
・前年に着果量が多かった樹
・2月から3月にかけて、葉色が茶色くなって落葉の多い樹
*考えられる原因
・結果母枝の充実がわるく、花芽分化が不十分な状態になる
・着果量(多い)や天候(9月の長雨や冬の寒さ)、栽培管理(成分不足と土壌条件の悪化)の影響で樹勢を弱め、花芽分化期に結果母枝が充実不良になると、花芽が減少する。

(3)柑橘類の摘果について
ア 摘果の目的
 果実同士の養分競合を少なくし、大きくて・形の良い・美味しい果実を生らせる作業です。果実が着きすぎると、葉の光合成産物が多くても1果当たりの配分量が少ないと肥大が悪く、小玉が多くなり、樹に負担がかかって隔年結果を起こします。また、隔年結果を防止し毎年着果させるためにも摘果をして適正な着果量にします。

【毎年着果させるには摘果をして適正な着果量にすることが必要】
イ 摘果の方法
 摘果は、一般的には生理的落果(6月中旬~7月上旬)が終わったら果実が多く着いているところを中心に7月上中旬に予備摘果をおこない、8月上中旬に仕上げ摘果をします。予備摘果(7月)と仕上げ摘果(8月)の2回行うと果実が揃います。
 家庭果樹栽培や手間の関係で、1回で摘果をしたい場合は、表1と図2・3を参考にしておこなって下さい。
 今年は着果量が多いため、隔年結果を防ぎ、毎年大玉を生らせるためには、半分程度は着果量を減らすことが必要です。また、果実を残す位置は、図2・3を参考にして下さい。

*参 考
(摘果は、数回に分けて行うと効果がある)
品種にもよりますが、①予備摘果を6月下旬から7月中旬に。②仕上げ摘果を8月中旬までに、③修正摘果(樹上選別)を9月上中旬に行うと果実が揃います。
(修正摘果を9月におこなう。)
花が多く着果過多の時は、品質向上と隔年結果防止のために、9月に樹上選別と言って、天成り果や皮の厚い果実や小玉果を摘果して着果調整します。

【枝別の着果位置別の果実品質】図2参照
①下向き果実ほど酸が低い。
②果梗枝が太く上向き果実ほど、果実は大きくて糖度が低くなり、酸が高くなります。

【収穫時の理想的な着果状態】
 果実が下を向いており、すべて有葉果のある1果生りとなっている。葉果比は20枚程度で1果、果実の上には必ず葉っぱが付いている状態です。

 着果の向きは、収穫時に果頂部が下に垂れた状態が良く、果梗枝が細いと美味しい果実が生産できます。上を向いたり横を向いたりしている果実は品質向上が望めません。

ウ 温州ミカンの着果状況
 着果状況は群状着果(かたまってならせる着果方法)は、着果が少ない場合は良いが、基本的には一粒なりの4~5枚の有葉果の独立着果を目指します。
エ はるみ・不知火の着果状況
 はるみ・不知火は、着果量が多いと理想的な結果母枝が形成されず、翌年良い結果枝が発生しません。そのため、隔年結果樹となってしまいます。隔年結果を防ぐには、7月上中旬頃から摘果を始めますが、思い切った摘果で着果量を減らしてください。

2 ウメ・モモ・スモモの秋季せん定
 初秋に樹幹内部の徒長枝を切除しないで冬季せん定をおこなうと、繁茂した枝葉により周囲の結果枝の日当りが悪くなり、充実不良の結果枝となります。また、徒長枝を切除しないと貯えた養分で枝が太り、冬季せん定が強くなります。冬季せん定が強いと、冬季の低温の影響による枯れこみの原因となり樹勢低下となります。
 秋せん定(新梢切除)の目的は、樹幹内部まで光が入る様にし、貯蔵養分の蓄積と花芽充実を図るためです。時期は、モモとスモモが9月上中旬に、ウメは7月中旬におこないますが、作業が遅れている場合は、9月中旬までにおこなえば効果があります。
 切除する新梢は、樹幹基部、主枝・亜主枝・側枝の基部の強い徒長枝で20cm程度残して切除します。また、不要な太い枝の切除は、9月中旬頃が良い時期です。方法は、若木の例を図4に示しましたので参考にしてください。

3 カキの夏季せん定
 着果量にもよるが、6月中旬から9月上旬にかけて切り返し剪定をしたところを中心に、亜主枝や側枝の上面から強い新梢(徒長枝)が発生します。樹幹内に発生した強い徒長枝は、翌年の結果母枝とならず、樹幹内を暗くして樹形を乱します。骨格枝として利用する徒長枝以外は、図5の様に切除します。
 時期は、果実に日を当てて品質向上を図る場合は7月中旬から8月上旬に、樹形を整える場合は8月中旬から9月上旬におこないます。

4 ブドウとナシの収穫適期
 ブドウとナシは、8月中旬から9月下旬にかけての比較的涼しくなった時期に収穫します。しかし、日中はまだまだ暑く、高温時の収穫は品質低下の原因になるので日中の収穫は避けた方がよいと思います。
(1)ブドウ
 8月になると、ジベレリン処理をした収穫の早いデラウエアからの収穫が始まります。収穫時期は品種にもよりますが、ジベレリン処理をした種なし大粒系品種が盆前の8月8日頃から始まり9月中旬まで続きます。
 収穫は、酸味が抜けて甘味が増し、果粒に弾力が出た頃で、赤色や紫色系では品種固有の色に着色した頃です。また、緑色品種は、黄色味が出た頃です。巨峰・藤稔(黒色系)は紫黒色に、安芸クイーン・ゴルビー(赤色系)は赤味が増し、ロザリオビアンコ・シャインマスカット(緑色系)は黄緑色になった頃です。
 収穫に対する注意点は、日当りのよい樹の周囲から成熟してきます。また、高温時で着房数が多いと品種固有の色に着色せず着色不良になります。いつまでも着色せず枝に着房していると、萎びて脱粒するので注意してください。
(2)ナ シ
 7月下旬になると、早生品種の愛甘水の収穫が始まります。収穫時期は、早生種が7月下旬~8月上中旬、中生種が8月下旬~9月上旬、晩生種が9月中旬以降です。
 収穫は、果実の糖度・酸度・果皮色・食味から判断しますが、果皮色は成熟が進むと葉緑素が分解され、青ナシ品種は黄緑色に、赤ナシ品種は全体にうっすらと赤褐色になった頃です。
 収穫に対する注意点は、次のとおりです。日焼け果は、成熟が早く、成熟の極端に早い果実は、芯腐れの可能性があります。短果枝の果実は成熟が早く、長果枝の果実は成熟がやや遅くなります。

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