トルコキキョウの管理~簡易被覆(2)~
[2022.11.01]
●営農技術指導員 大澤梅雄●
質問
花づくりの先輩から聞いた話では、トルコキキョウの苗を植えても寒さで枯れてしまうそうです。齢を考えると今さらビニールハウスや暖房機に投資はできません。何かいい方法はありませんか。
回答
確かにこの地域では凍霜害で苗が枯れてしまうことがあり、露地栽培では生産が不安定です。施設栽培であれば問題は一気に解決しますが、投資に躊躇されるのはもっともなことです。
そこで、いろいろな冬越し方法を試した結果、当JAで開発した切り花用簡易被覆を行えば、生産が安定し品質も向上することがわかりましたので、今回その作り方を10月に引き続き紹介します。
5 ビニール囲いの見取り図
水平張りに比べやや変則的な構造をしている斜め張りを紹介します(図)。
6 ビニール囲い(斜め張り)の作成手順
(1) 畝立て
植床(ベッド)幅を80cm、通路幅を40cmとする高畝を立てます。
(2) 杭打ち
ビニ囲い前面には120cmの防獣杭を地上高90cmになるよう1m間隔に打ち込みます。背面には150cmの防獣杭を地上高120cmになるよう1m間隔で打ち込みます。
(3)横木
防獣杭の先端に園芸用の支柱を横に渡し、クロスバンドで止めていきます。
(4)垂木
背面の横木から前面の横木へ直角に支柱を渡し、クロスバンドで止めます。図2では1m間隔で渡していますが、強度を考えて適宜間隔を調節して下さい。
(5)針金
上部(屋根)に張るフィルムが雨や雪の重さで弛まないようにするには、垂木を増やせば良いのですが、安く早く作るのがビニ囲いの狙いですので、針金を張ることにしました。防獣杭の先端部についている爪に針金を引っかけて杭の間を交差させて張ります。
(6)被覆
まず、上部(屋根)に不織布を張ります。側面にはビニール又はポリエチレンフィルムを張っていきます。張る際の起点となる杭は、背面端の杭としそこから囲いを一周して起点に戻ります。杭や横木等にパッカーでフィルムを固定させて被覆します。また、ビニ囲いの保温性が低い場合は被覆枚数を多くすると良いでしょう。
なお、屋根の不織布は春までとし、それ以降はビニールまたはポリフィルムに張替え、保温用から雨よけ用施設に切り替えますが、換気に留意してください。気温が高くなれば側面のフィルムをすべて取り外すことも良いでしょう。
7 ビニ囲いの管理
⦁ 除草、施肥などの作業は、背面のフィルムだけを剥がせば済みます。
⦁ 茎の先端が屋根に届きそうになったら三角屋根に作り変えます(写真)。
⦁ 屋根には不織布を張ったのでフィルムを開け閉めする換気作業は不要となり、冬の間は密閉状態としておきます。ビニ囲い中の温度が30℃を超えるようになったら、側面のフィルムをすべて取り除きます。
⦁ 側面のフィルムを取り除くと、長く伸びた茎は風で倒れやすくなります。そこで、フラワーネットが必要になりますが、この時期のネット張りは大変手間がかかります。そこで、作業の手順としては、ビニ囲い作成時にネットをセルトレー近くまで下げて張ると良いでしょう。そして、生育に応じてネットを上げるようにします。
⦁ 降雨後、ビニ囲いの上部に雨が溜まることがありますので、必ず点検し、雨を流しておきましょう。