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気象災害対策 夏秋編

[2025.03.01]

●営農技術指導員 須崎静夫●

●はじめに

 台風の進路予想もかなり正確になってきました。時々6月早々からやってきます。台風対策は事前・事後に行い、接近・通過中は、安全第一です。地球温暖化が進むと、熱帯果樹が露地で栽培できるようになるかもしれませんね。

●強風

 春先の強風で、キウイフルーツ・ブドウなどの新芽が欠けることがあります。早めに誘引するか、芽かき・枝かきの時に、欠ける分を見越して多めに残します。予め、新梢のもとの部分を軽く潰して誘引してもいいでしょう(図1)。

 防風垣・防風網を設置します。防風垣が過繁茂になると、風通しが悪くなり、霜害や病害虫発生を助長するので、3・6・9月頃、適度に手入れします。

 倒れた樹は、根を切らないように立て直し、枝葉に着いた泥などを洗い流します。果実肥大期に落葉がひどい場合には、摘果して果実数を制限したり、使用基準に従って殺菌剤・葉面散布剤をなどを使用したりします。

図2 日焼け対策

 

 

▲早めの誘引            ▲防風垣・防風網

 

●大雨・豪雨・台風・防風雨

 排水性良好の目安は降雨の翌日に、水たまりや泥濘(ぬかるみ)が無く、普通に歩ける状態です。水はけが悪いと、根腐れ・湿害を招き、果実の裂果や腐敗を誘発します。

 事前対策として休眠期には明渠(めいきょ)・暗渠(あんきょ)や防風網・防風垣を施工・設置します。生育期には誘引、結束、支柱立て、マルチ敷説や排水路に溜まった葉っぱや泥を処分します。収穫後なら、不要な枝を外すことも有効です。暴風が予想される場合は、事前に防風網を巻き上げて、棚・支柱が倒れるのを防ぎます。 鉢植えなら、雨水の溜まらないところや風の当たらないところに、転がらないように寝かせるか、屋内に取り込みましょう。

 事後対策も速やかに行います。滞水していたら、溝を掘って水を逃します。

●雹(ひょう)

 袋掛けで防げるでしょうか。現実的にはお手上げで、降らないことを祈るしかありません。関東の常襲(じょうちゅう)地域では、予報に応じて網目の細かい防雹網を被せることもあるそうです。

 昨年和歌山県では、ウメが大きな被害を受けました。

●少雨・土壌乾燥

 雨が少なく、土壌が乾燥すれば、葉が萎れる前に潅水します。5~10日おきに10~30mmなど蒸散・蒸発量に見合う量が必要です。少しずつ潅水すると、根が浅い所・地表面に集まり、かえって土壌乾燥に弱くなります。土壌乾湿の差が激しいと、カンキツやブドウで裂果が生じます。

 草刈りや敷きわらをしたり、不要な枝を剪除したりして、蒸散・蒸発量を抑えましょう。

 潅水設備と水があれば、夕方から朝方に、潅水パイプ・グロースガン・SS・ドリップなどで潅水・散水します(図2)。

図2 潅水

▲ドリップ潅水

 

●直射光・高温

 果実に強い直射光が当たると、日焼けしてしまいます。極端な芽かき・枝かきを控えましょう。

 カキは肥大しても果実の向きが変わりません。葉っぱに隠れる下向きの果実を残します。ブドウは、カサ掛け・袋掛けで対応します。日焼けする分を見越して果梗部(肩)側の果粒を1段くらい多めに残したり、面倒でも、袋掛けの前後にカサを掛けたりします(図3)。日焼けは着色し始める6月いっぱいまで要注意です。袋を掛けると袋内の温度は上がりますが、日射が遮られ、日焼けは軽減されるみたいです。細霧・ミストも効果的ですが、あまり現実的ではありません。

図3 日焼け対策:未然防止:着果位置の配慮・遅めの摘果など

     

▲カサ掛け(ブドウ)     ▲着果位置の配慮・遅めの摘果(カキ) 赤い部分が日焼け

 

●日照不足

 曇雨天が長く続くと、同化量が減って果実糖度が上がりません。着色を良くするためには、天気予報と相談しながら、タイベック・スノーテックス・太陽シートなどの反射マルチ資材を敷設します。 収穫前の剪定で、採光性を少しでも改善して着色向上を図ります。施肥量を増やしたり、葉面散布を行ったりしても、明確な効果は得られないかもしれません。

図4 着色向上

▲反射マルチ

        

▲お迎えですよ       ▲雨にも負けず、風にも負けず       ▲天気予報のテレビ画面に戯れるニャンズ①・②

 

●ちょろっと一言●

 2024年7月下旬から、最高気温35℃超えの猛暑日が連続25日を超えました。ところにより、ちょろっと、にわか雨も降りましたが、モモはもとより、乾燥にも強いミカンの葉っぱが焼けたり、樹が枯れたりしてしまいました。枯木や老木はこれを機に改植されるとよいでしょう。

●ちょろっと一言●

小さい頃「たいふういっか」は、台風の家族(台風一家)かと思っていました。最初の勘違いは「ウスターソース」です。なんで濃いのに「うす~い」のかな~と思っていたら、イギリスのソース発祥地でした。Wordで入力すると、「Worcester」「sauce?」に変換してくれましたが、うまく発音できません。濃いめなら「コーミーソース」もありますね。

▲台風一家のみなさん

 

●ちょろっと一言:キウイフルーツの思い出●

 キウイフルーツの果実を見たことも、食べたこともない40年くらい前のお話です。

 「そろそろ新梢誘引だよ」と言われて、次の日早々、誘引するテープナーをぶら下げて行ってみれば、強風にやられたのか、新梢が見事に、コウモリのようにぶら下がっていました。

 どっちみち、誘引の仕方が分かっていないと、誘引するたびに新梢が折れて、ごまかそうと反対向きに曲げると綺麗に外れちゃいますね。

 当時の品種は、アボット、ヘイワード、ブルーノ、モンティ(雌)とトムリ、マツア(雄)でした。ヘイワード、トムリは、今でも現役バリバリですね。

 

図:風に吹かれて、あるいは、無理やり誘引されて、コウモリになったキウイフルーツの新梢ず

    

●ちょろっと一言: ブドウの着色向上対策●

 温暖化の影響か、年々、ブドウの色着きが悪くなっているようですね。

 ①成らせすぎない

 ②収穫1か月くらい前に環状剥皮する

 ③新梢を切り返して棚下を明るくする

 ④反射マルチを敷く

 ⑤巨峰系なら、着色向上に登録のある植物調整剤をつかう

 ⑥もっと涼しい所で栽培する

 ⑦着色の良い品種・系統や着色しなくても成熟する緑白色品種を栽培する (順不同)でしょうか。

 家庭果樹なら、「クイーンニーナ」みたいな、色が着きにくくても美味しい品種を、どうにかこうにか育ててみたいものですね。

 

●ちょろっと一言: 雑草管理、さてどっちでしょうか●

 雨の降らない・高温乾燥時における果樹園の土壌管理で、雑草を刈った方が良いのか、刈らない方が良いのか、さてどっちでしょうか。

 草を刈った方が良い派の意見は、雑草から土壌水分が蒸発されてますます土壌の乾燥が進むから、のようです。

 一方、草を刈らない方が良い派の意見は、雑草が地中深くの土壌水分を吸い上げてくれるから、のようです。

 

●ちょろっと一言: 台風被害調査●

 台風の翌日は被害調査が行われます。

 ナシは落ちた果実を数えれば大体の減収・被害程度が分かりますが、イチジク・カキのように、葉っぱは落ちるけど、果実は落ちないで傷だらけになったりとか、水稲がべったり倒れたりとか、植えたばかりのハクサイやキャベツとかになると、もう何が何やらで、後から被害面積やら被害額を算出するのは大変です。

 追記:笑い話です。新人の担当者さんから連絡が入りました。

 新人さん「現場から報告です。スイカの台風被害はありません」

 電話当番「座布団は大丈夫ですか」

 新人さん「座布団なんかありませんよ、っていうか、スイカさんが座布団に座るんですか。お行儀がいいんですね」

  

▲座布団にちょこんと座る「おおのースイカさん」&「スイカさん」

 

●ちょろっと一言:虚構新聞:Japan joke newspaper●

 虚構新聞に、比較級「summer」の表現を最上級「summest」に変えましょうとのことです。実際に起こらないことを前提にしたパロディです。ちなみに、原級の「sum」は、太陽の「sun」から派生したそうです。ありえそうなお話ですね。

 

●ちょろっと一言:アボカドの産地化●

 地球の温暖化・沸騰化で、近くでも熱帯果樹「アボカド」の産地化が始まりました。国内産の完熟果実は、輸入品の完熟前に収穫された果実とは、かなり食味も違うそうです。

 

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