
ツバキの管理~スギタニモンキリガの防除~
[2025.03.01]
●営農技術指導員 大澤梅雄●
質問
鑑賞用にと庭にツバキを植え始めて20年。徐々に増え今では10本になりました。しかし6年程前から3月になると蕾が落ちるので変だと思い、中を見たらイモムシのような虫がいました。初めて見る虫ですが防除法を教えてください。
回答
お話の内容から推測すると、暖地の害虫「スギタニモンキリガ」の幼虫ではないかと思います。当地では珍しい虫で温暖化の影響で発生したかもしれません。そこで、今月は「スギタニモンキリガ」の紹介と防除について記します。
1 被害
落ちるのが当たり前と思われているツバキの花。自然落下と思いきや花を割ってみると、褐色のイモムシがいることがあります。このイモムシが本種の幼虫で、ツバキの蕾や花に食い入り、内部の雌しべや雄しべ、子房などを食害し、3~4月になると被害を受けた蕾や花は地上に落ちます。特にツバキが集団的に植栽されている場所で発生が繰り返されるようです。
2 生態
本種は年1回の発生で、トマトやナスの果実に食入するオオタバコガと同じヤガ(夜蛾)の仲間です。10~12月に成虫が羽化し夜間ツバキの花芽、蕾、葉芽の基部に1~数個の白い卵を産み付けます。3月頃孵化した幼虫は蕾に1mm程の穴をあけて中に潜り、雌しべ、雄しべ、子房などを食い荒らします。幼虫はいくつかの花を渡り歩いて生長し、3~4月には花ごと地上に落下します。老熟幼虫になると土の中で繭を作り、そのまま夏を過ごし、9月以降にさなぎとなります。
3 防除
(1)農薬による防除
登録農薬はありません。
(2)耕種的防除
防除の要諦は早期発見につきます。産卵が始まる11~12月頃から蕾の基部を見回り、1.5mm程の小さな白い卵を発見したら潰しておきます。また、蕾や花弁を1mm前後の穴があるかどうかを確認し、中にいる幼虫を見つけ取り出して処分します。開花後は花芯部の食害や糞による汚れなどから幼虫を見つけて捕殺します。また、3月以降は落下した花や蕾の中に老熟幼虫がいる場合があり、これが時期発生源となるので、集めて必ず焼却処分をしてください。
<参考図書>
竹内浩二,「花・庭木編病害虫大百科」,農文協,(2020)
上住 泰・森田 儔,「植木の病害虫防除」,家の光協会,(1991)